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別居後に婚姻費用を、離婚後に子に養育費を支払っている場合の扶養控除について2023-02-06 19:00

カテゴリ: 離婚一般

 別居後、婚姻費用を支払っている場合、子と同居していない側の親は、子を扶養親族として申告し、所得税の扶養控除の適用を受けることができるでしょうか。

 また、離婚後、子の養育費を支払っている場合、子と同居していない側の親は、子を扶養親族として申告し、所得税の扶養控除の適用を受けることができるでしょうか。

 

 結論としては、どちらの場合も、子を扶養親族として申告することができます。

 ただ、子と同居している側の親も、子を扶養親族として申告することができますが、父と母の両方が扶養控除の適用を受けることはできません。

 そのため、父と母の両方が扶養控除の適用を受けようとした場合には、どちらが適用を受けることができるかが問題になりますが、原則は、先に申告した方が扶養控除の適用を受けることができますが、どちらが先かで決めることができない場合には、所得が大きい方が扶養控除の適用を受けることができます。

 

国税庁HP タックスアンサー(よくある税の質問)No.1180 扶養控除

所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)

国税不服審判所HP 平成23年4月18日裁決

 

1 扶養控除とは

 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを「扶養控除」といいます。

 「扶養親族」については、所得税、住民税とも「扶養控除」という所得控除があり、扶養親族の数に応じて、所得税・住民税とも税金が安くなります。

 現在の扶養控除額は、所得税が1人あたり38万円です。なお、特定扶養親族(19歳以上23歳未満の人)については63万円とされています。また、住民税が1人あたり33万円です。これも、特定扶養親族の場合は45万円とされています。

 

 「扶養親族」と認められるには、①配偶者を除く親族等であること、②納税者と生計を一にしていること、年間の合計所得額が38万円以下であること等が必要です(所得税法2条34号)。

 「扶養親族」にあたるかどうかは、原則として、その年の12月32日の現況によって判定されます(所得税法85条3項)。

 ただ、「扶養親族」のうち16歳未満の「年少扶養親族」は、所得税、住民税とも「扶養控除」ができません。住民税の非課税限度額の計算には影響します。

 給与所得者(サラリーマン)であれば、「扶養控除等申告書」に記載することで、年末調整で所得税が還付されます。

 

2 子と同居しておらず、養育費を支払っている親は扶養控除を受けることができるか。

 扶養控除を受けるためには、子が納税者と「生計を一にしていること」が必要になりますが、子と別居している親は、子と「生計を一にしている」といえるのかが問題となります。

 この点については、必ずしも同居を要件とするものではなく、例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われるものとされています。

 国税庁HP タックスアンサー(よくある税の質問)No.1180 扶養控除

3 重複した場合

 子と同居していない側の親でも、養育費を支払っていれば、子を扶養親族とすることができます。

 養育費を支払う合意をしただけで、実際に養育費を支払っていない場合は、扶養親族にすることはできません。

 他方で、子と同居している親側も、子を養育していることから、子を扶養親族にすることはできます。

 どちらが扶養親族になるかは、両親の選択に委ねられています(所得税法施行令219条1項)。

 したがって、両親が話し合いができる状況であれば、どちらか一方が、給与所得者の扶養控除等申告書(又は所得税の確定申告書)に子を扶養親族とする旨の記載をすればよいだけです。

 しかし、話し合いができない状況では、先に給与所得者の扶養控除等申告書を勤務先に提出した者の扶養とすることになっています(所得税法施行令219条2項1号)。

 それでも、定まらない場合(どちらが先に給与所得者の扶養控除等申告書提出したかが不明であったり、判定が困難な場合等。)は、子は所得の多い方の扶養親族になります(所得税法施行令219条2項2号)。

 所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)

(二以上の居住者がある場合の扶養親族の所属)

第二百十九条 法第八十五条第五項(扶養親族等の判定の時期等)の場合において、同項に規定する二以上の居住者の扶養親族に該当する者をいずれの居住者の扶養親族とするかは、これらの居住者の提出するその年分の前条第一項に規定する申告書等(法第百九十五条の二第一項(給与所得者の配偶者控除等申告書)の規定による申告書を除く。以下この条において「申告書等」という。)に記載されたところによる。ただし、本文又は次項の規定により、その扶養親族がいずれか一の居住者の扶養親族に該当するものとされた後において、これらの居住者が提出する申告書等にこれと異なる記載をすることにより、他のいずれか一の居住者の扶養親族とすることを妨げない。

2 前項の場合において、二以上の居住者が同一人をそれぞれ自己の扶養親族として申告書等に記載したとき、その他同項の規定によりいずれの居住者の扶養親族とするかを定められないときは、次に定めるところによる。

一 その年において既に一の居住者が申告書等の記載によりその扶養親族としている場合には、当該親族は、当該居住者の扶養親族とする。

二 前号の規定によつてもいずれの居住者の扶養親族とするかが定められない扶養親族は、居住者のうち総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額又は当該親族がいずれの居住者の扶養親族とするかを判定すべき時における当該合計額の見積額が最も大きい居住者の扶養親族とする。

 

 上記の所得税施行令219条の解釈が争われた事例もあります。

 所得税法施行令219条2項1号は、居住者同士に意思の連絡がある場合を前提にした規定であり、離婚し、相互に意思の連絡がないから、同号は適用されず、同項第2号を適用すべきであるという主張がされ、これを前提に、総所得金額等が多いから扶養親族に該当し、所得税の計算において扶養控除が適用されるべきであるとの主張がされました。

 しかし、上記の主張は認められず、先に扶養控除等申告書を勤務先に提出した方が扶養親族に該当すると判断されています。

 国税不服審判所HP 平成23年4月18日裁決

 平成18年分については、請求人が養育費の送金は行っておらず長男と「生計を一にするもの」には該当しないことから、また、平成19・20年分については、元妻が請求人より先に勤務先に対し長男を扶養親族とする旨の扶養控除等申告書を提出していることから、いずれの年分も請求人において長男を扶養親族とする扶養控除の適用は認められないとした事例(平成18年分~平成20年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却)

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