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大阪地方裁判所で免責不許可とされた過去の事例について 52022-11-25 18:00

カテゴリ: 自己破産

 自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていると思います。

 個人の方が自己破産をする最大の目的は借金を免除してもらうことにあるはずです。自己破産をすると、借金(債務)について支払いの責任を免除してもらうことができます。このことを免責といいます。

 厳密には、破産手続と免責手続は別の手続ではありますが、自己破産を検討している方は基本的には両方の手続を行うことを希望されているはずです。

 しかし、自己破産の手続をしたからといって、必ず免責されるわけではありません。

 「免責不許可事由」がある場合には、裁判所に免責を許可してもらうことができないことがあります。

 自己破産をしても免責を受けることができなければ、意味がありませんので、自己破産をするにあたっては免責不許可事由があるかどうかを検討しておく必要があります。

 過去に「免責不許可」とされた事案の概要が参考になると思われますので、ご紹介いたします。

1 問題となった破産法の規定

 破産法では、第252条第1項各号に、免責不許可事由が定められています。

 今回紹介する事例で免責不許可とされたのは、以下の類型に該当するとされたためのようです。

・ 1号 財産の不利益処分

 「債権者を害する目的で,破産財団に属し,又は属すべき財産の隠匿,損壊,債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」

・ 4号 浪費・射幸行為

 「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」

・ 5号 詐術による信用取引

 「破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。」

・ 7号 虚偽の債権者名簿の提出

 「虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。」

・ 8号 調査における説明拒否・虚偽説明

 「破産手続において裁判所が行う調査において,説明を拒み,又は虚偽の説明をしたこと。」

・ 9号 管財業務妨害行為

 「不正の手段により,破産管財人,保全管理人,破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。」

・ 11号 破産法上の義務違反

 「第40条第1項第1号,第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。」

2 免責不許可とされた事例の内容

 大阪地方裁判所において、2019年10月から2020年11月までの間に、免責が不許可となった事件は以下の8件のようです。

① 破産者は、生活保護を受給していたところ、虚偽の申告により得たクレジットカードを利用して10万円以上の商品を12回以上にわたり購入し、また、支払い不能後の3か月間でブランド品の購入やエステなどに約285万円を費消したことが、4号に該当するとされた。

 また、破産者は、破産手続き開始の原因となる事実があることを知っていたにもかかわらず、自己の年収や他社からの借入額を偽って合計10万円を借り入れたことが5号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ いずれの免責不許可事由の程度も看過することができない。

・ 破産原因が生じるに至った経緯についてやむを得ない事由があったとはいえない。

➁ 破産者が、裁判所の許可を得ずに居住地を離れて居所等を明らかにせず、また、出頭が求められていたにもかかわらず、正当な理由なく意見者集会に組数回出頭しなかったことが8号及び11号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 本件に現れた一切の事情を考慮しても、破産者に対して免責を許可することが相当であると認められる自由はない。

③ 破産者が、飲食、ゴルフ、物品の購入、旅行及び賭博等に約7200万円を費消したことが、4号に該当するとされた。

 また、破産者が、裁判所の許可の範囲を逸脱して、他県に滞在したことが11号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 破産者の浪費額は著しく多額である。

・ 破産者が支払不能に至った原因は、破産者が代表取締役であった破産会社の経営破綻にあるが、この経営破綻の要因の一つに破産者の浪費がある。

・ 破産者は、免責観察の一環として、破産管財人から家計収支表を作成するよう指示を受けていながら、正当な理由なくこれを作成しなかった。

④ 破産者は、破産管財人に対し、預金の使途について虚偽の説明をし、変造した領収書を提示するなどした。その後破産者は、破産管財人や申立代理人からの連絡に応じず、出頭が求められていたにもかかわらず債権者集会にも出頭しなかったことが、6号、8号及び11号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 破産者が破産管財人に協力しないことにより、破産管財人の財産調査及び換価作業が阻害された。その悪質さや不誠実さは顕著である。

⑤ 破産者は、新たに知人と設立した会社の資金口座として流用するため、破産者名義の3口の預金口座及び破産者が代表取締役を務める株式会社(破産者と同日に破産手続き開始決定を受けた)の2口の預金口座の存在を申告しなかった。

 また、破産者は、申立代理人による受任通知後、破産者の親族に対して、450万円を交付した。破産者の行為により流出した金員について、その回収は一部にとどまった。3号及び11号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 破産者の行為の悪質性及び破産手続に対する不誠実さは顕著である。

⑥ 破産者は、自己が代表を務める法人の資産と自己の資産とを区別することなく一体として管理していたところ、その経営する法人について粉飾決算を行うなどして融資を受け、8年間にわたり合計8000万円以上を愛人関係にあった者に対して贈与したことが1号及び4号に該当するとされた。

 また、破産者は、支払い不能であることを認識しつつ、自己が代表を務める法人について、簿外債務を除外した決算書及び虚偽の議事録を提出するなどして6億2800万円の融資を受けうち4億3700万円を破産者の金銭として取得したことが5号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 破産者の贈与による破産財団への毀損の程度は大きい。贈与の額も多額である。

・ 破産者が詐術により借り受けた額は極めて多額であり、その態様も悪質である。

・ 破産原因が生じるに至った経緯について、汲むべき事情があるとはいえない。

・ 破産管財人に対して不合理な説明をするなどしており、説明義務を尽くしたといえるかについては疑問が残る。

⑦ 破産者が、借金の返済に充てるため、80万円で購入した時計を60万円で売却したことが、1号及び2号に該当するとされた。

 破産者が、20年以上の間、飲酒・飲食、賭博、遊興等のため、合計1億円を超える金員を費消し、そのために多額の債務を負ったことが、4号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 浪費の態様は悪いうえ、酌量すべき事情もない。

・ 破産者は破産管財人に無断で破産手続き開始決定時の住所を離れて前妻方で生活するなど、内政が十分ではなく、手続きに真摯に望んでいなかったことがうかがわれる。

⑧ 破産者が、破産財団を形成すべき生命保険金約283万円について、破産管財人に対して報告をしなかった。またその存在が発覚した後、その使途について、破産管財人に対して虚偽の報告をしたことが8号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 説明義務違反の程度は悪質で、破産財団に与える影響も大きい。

3 まとめ

 破産手続きを検討されている方は、免責を受けることを大きな目的とされていると思います。

 ある程度の免責不許可事由があったとしても、誠実に対応していれば、裁量免責を受けることができる可能性はありうますが、今回ご紹介したような事例では、免責が不許可とされています。

 破産手続きにおいては、正直に事情を話し、何も隠し立てしないよう心掛ける必要がありますし、破産管財人の調査などの協力し、破産法を守って適正な手続が行われるようにしなければなりません。

 自己破産を検討されている方は、上記のような行為を行わないよう注意していただく必要がありますが、ご自身では分からないこともあろうかと思われますので、まずは弁護士にご相談いただければと存じます。

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