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大阪地方裁判所で免責不許可とされた過去の事例について 42022-11-24 18:00

カテゴリ: 自己破産

 自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていると思います。

 個人の方が自己破産をする最大の目的は借金を免除してもらうことにあるはずです。自己破産をすると、借金(債務)について支払いの責任を免除してもらうことができます。このことを免責といいます。

 厳密には、破産手続と免責手続は別の手続ではありますが、自己破産を検討している方は基本的には両方の手続を行うことを希望されているはずです。

 しかし、自己破産の手続をしたからといって、必ず免責されるわけではありません。

 「免責不許可事由」がある場合には、裁判所に免責を許可してもらうことができないことがあります。

 自己破産をしても免責を受けることができなければ、意味がありませんので、自己破産をするにあたっては免責不許可事由があるかどうかを検討しておく必要があります。

 過去に「免責不許可」とされた事案の概要が参考になると思われますので、ご紹介いたします。

1 問題となった破産法の規定

 破産法では、第252条第1項各号に、免責不許可事由が定められています。

 今回紹介する事例で免責不許可とされたのは、以下の類型に該当するとされたものです。

 また、多く認められている免責不許可事由の類型は、浪費・射幸行為によって著しく財産を減少させたこと(破産法第252条第1項第4号)及び破産者が重要財産開示義務や説明義務等の法律上の義務に違反したこと(同項第11号)です。

・ 1号 財産の不利益処分

 「債権者を害する目的で,破産財団に属し,又は属すべき財産の隠匿,損壊,債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。」

・ 2号 不当な債務負担行為

 「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。」

・ 3号 非義務偏頗行為

 「特定の債権者に対する債務について,当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で,担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって,債務者の義務に属せず,又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。」

・ 4号 浪費・射幸行為

 「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」

・ 7号 虚偽の債権者名簿の提出

 「虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。」

・ 8号 調査における説明拒否・虚偽説明

 「破産手続において裁判所が行う調査において,説明を拒み,又は虚偽の説明をしたこと。」

・ 11号 破産法上の義務違反

 「第40条第1項第1号,第41条又は第250条第2項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。」

2 免責不許可とされた事例の内容

 大阪地方裁判所において、2017年9月から2018年9月までの間に免責が不許可となった事件は以下の7件のようです。

① 破産者が、約6年間で、競艇に5000万円以上を使用し、1600万円を超える損失を出したことが、4号に該当する事由とされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられているようです。

・ 本件で行われた賭博行為は、極めて悪質である。本件で行われた賭博行為に使用した金額や、債務の返済が滞るようになった時期に照らせば、破産者が債務を負うに至った他の原因があるとしても、賭博行為が破産者の支払不能に与えた影響は極めて大きい。

➁ 破産者が、約1年5か月の間に、風俗店の飲食代等として約1000万円を費消したほか、同店店員に580万円を交付したことが、4号に該当する事由とされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられているようです。

・ 破産申立書記載の債権総額は、1400万円弱であり、破産者は、上記の浪費をしていなければ、破産に陥ることはなかった。

・ 破産者は、金員の使途について、当初は虚偽の説明をしていた。

・ 破産に至った理由の自省も必ずしも十分ではなく、経済的更生のための方策についても抽象的なものを述べるにとどまる。

③ 破産者が、2年弱の間に、カジノでのギャンブル等で約4000万円を費消するとともに、高級クラブ等で約4600万円を費消したことが、4号に該当する事由とされた。

 また、破産者が、カジノでの費消額を過少に説明するとともに、金銭を詐取したことはない旨及び偽造文書等は一切提示していない旨の虚偽の事実を説明した(破産法40条1項1号、250条2項)こと、破産者が、所有するモーターボート2第を開示しなかった(破産法41条)ことが、11号に該当する事由とされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 浪費額が多額であること。

・ カジノでの費消額について虚偽を述べており、悪質性があること。

・ モーターボート2第を隠匿し、秘密裏に換価しようとした点も身勝手であること。

・ 金員詐取や偽造文書提示の事実について虚偽を述べており、その態度が誠実とはいえないこと。

④ 破産者が、破産手続開始申立ての約3か月前に、自らが売却代金を受領したいと考え、評価額を大きく下回る金額で、自動車を売却したことが、1号に該当する事由とされた。

 破産者が、支払い停止後に、勤務先の同僚らに対し、弁済期が明確に定められていない債務の弁済をしたことが、3号に該当する事由とされた。

 破産者が、約5年間にわたり、毎月約20万円(総額約1200万円)をパチンコで費消したことが、4号に該当する事由とされた。

 破産者が、自動車の売却経緯及び売却代金の受領について、虚偽の説明をし、パチンコで多額を費消したことを隠匿する(破産法40条1項1号、250条2項)とともに、預金口座の存在を開示しなかった(破産法41条)ことが、11号に該当する事由とされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 破産者は、多額かつ頻繁な取引履歴がある預金口座の存在を明らかにせず、虚偽の説明も重ねており、破産手続に対して不誠実な態度を示している。

・ 評価額を大きく下回る金額で自動車を売却するとともに、パチンコで多額を費消し、財産を大きく毀損した。

⑤ 破産者が、債権者を害する目的で、合計2000万円以上の財産を隠匿するとともに、支払不能となった後、複数の第三者の預金口座に合計1000万円以上を振り込み、財産を不当に減少させたことが、1号に該当する事由とされた。

 破産者が、破産手続開始前の約1年1か月の間に、宝飾品の購入等により、1000万円以上を費消し、また、高級クラブでの飲食を繰り返すなどして高額の金銭を支出したことが、4号に該当する事由とされた。

 破産者が、裁判所の許可を得ずに、居所を変更した(破産法37条1項)うえ、預金口座等の存在を隠匿するために虚偽の説明をし、高級クラブでの飲食代金等について説明を拒んだ(破産法40条1項1号、250条2号)ことが、11号に該当する事由とされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 浪費額は1000万円以上と多額であるうえ、隠匿を図り、又は不当に減少させた財産も多額である。

・ 破産者の説明義務違反の程度は甚だしい。

・ 破産者は、破産手続開始後も、高級クラブでの飲食を繰り返すなどしており、真摯な反省の態度が見られない。

⑥ 破産者が、射幸性の高い取引である株式先物取引の運用に失敗し、少なくとも合計4000万円以上の損失を生じさせた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 破産者は、勤務先である金融商品取引所から同取引所の扱う商品の取引を禁止されていたにもかかわらず、知人に対し、株式先物取引のリスクを説明せずに、高利回り及び元金保証を約束して、運用資金を借り入れ、先物取引を行い、4000万円以上の損失を被った。

⑦ 破産者が、支払停止後、破産者の子が代表取締役を務める株式会社に対し、下取り価格約221万円の自動車を無償譲渡したことが、1号に該当する事由とされた。

 破産者が、破産手続き開始決定前の約2か月間に、約140万円のチケットを購入し、廉価で換金したことが、2号に該当する事由とされた。

 破産者が、支払い不能となった後の約1年間に、クレジットカードを利用して、家具代等として、約2630万円を費消したことが、4号に該当する事由とされた。

 破産者が、破産手続開始決定後もクレジットカードの利用を継続する目的で、当該クレジットカード会社を債権者として記載しなかったことが、7号に該当する事由とされた。

 破産者が、正当な理由なく債権者集会に出頭せず、また、管財人に対して、クレジットカードの利用状況や破産者が100%株主である会社の経営状況等に関する説明を拒んだ(破産法40条1項1号)ことが、8号及び11号に該当する事由とされた。

 破産者が、裁判所の許可を得ずに転居した(破産法37条1項)ことが、11号に該当する事由とされた。約2年3か月の間に、パチンコなどの遊興費として約650万円を費消したことが4号に該当するとされた。

 免責不許可の主な理由として、以下の点が挙げられています。

・ 浪費額が高額であり、著しい説明義務違反があることに加え、破産者は、破産開始決定後も、約3か月で約440万円のクレジットカードの利用をするなど、真摯に経済生活の構成を図る意思が認められない。

3 まとめ

 破産手続きを検討されている方は、免責を受けることを大きな目的とされていると思います。

 ある程度の免責不許可事由があったとしても、誠実に対応していれば、裁量免責を受けることができる可能性はありうますが、今回ご紹介したような事例では、免責が不許可とされています。

 破産手続きにおいては、正直に事情を話し、何も隠し立てしないよう心掛ける必要がありますし、破産管財人の調査などの協力し、破産法を守って適正な手続が行われるようにしなければなりません。

 自己破産を検討されている方は、上記のような行為を行わないよう注意していただく必要がありますが、ご自身では分からないこともあろうかと思われますので、まずは弁護士にご相談いただければと存じます。

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