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免責不許可事由5 詐術による信用取引2022-11-20 15:00

カテゴリ: 自己破産

 自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていると思います。

 個人の方が自己破産をする最大の目的は借金を免除してもらうことにあるはずです。自己破産をすると、借金(債務)について支払いの責任を免除してもらうことができます。このことを免責といいます。

 厳密には、破産手続と免責手続は別の手続ではありますが、自己破産を検討している方は基本的には両方の手続を行うことを希望されているはずです。

 しかし、自己破産の手続をしたからといって、必ず免責されるわけではありません。

 「免責不許可事由」がある場合には、裁判所に免責を許可してもらうことができないことがあります。

 自己破産をしても免責を受けることができなければ、意味がありませんので、自己破産をするにあたっては免責不許可事由があるかどうかを検討しておく必要があります。

 今回は、「免責不許可事由」の一つである詐術による信用取引(破産法第252条第1項第5号)について解説します。

1 破産法の規定

 破産法第252条第1項第5号では、免責不許可事由として以下の通り定めています。

 「破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。」

 破産手続開始の申立ての日の1年前の日から破産手続開始決定日までの間に、自身としてはもう借金を返済していくことができない状態であることが分かっているのに、誰かに対して自分は支払不能ではないと嘘を言って騙してローンなどを組んで物を手に入れたりすることが該当します。

 他に借金はないとか、収入額について嘘をついて、ローンで自動車を買ってしまったという場合などです。

 この条文を分解すると、以下のとおりになります。

 ① 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、信用取引により財産を取得したこと

 ➁ その信用取引をするに際して、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いたこと

2 信用取引による財産の取得

 信用取引とは、クレジットカード決済でのショッピングなどのことです。

 クレジットカードによるショッピングでは、商品を買うに当たって、クレジットカード会社に立替払いをしてもらうことになります。クレジットカード会社は、後で自分のところに立て替えて支払った分を支払ってくれるだろうという「信用」に基づいて、立替払いをするので、信用取引と言われます。

 信用取引による財産取得が免責不許可事由となるのは、その取得時期が、「破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間」になされたものである場合で、それ以外の時期において詐術による信用取引で財産を取得したとしても、免責不許可事由には当たりません。

3 詐術を用いたこと

 詐術による信用取引という免責不許可事由となるのは、信用取引によって財産を取得したことに加え、その信用取引において、「破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用い」たことが必要となります。

 「詐術」とは、相手を騙すということです。

 「破産手続開始の原因」とは、支払不能の状態にあることです。

 「破産手続開始の原因となる事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得した」とは、支払不能状態ではないと嘘を言って、相手方を騙し、信用取引により財産を取得したということです。

 破産者が金員の借入に当り負債金額や収入金額についての申告を求められた際に虚偽の事実を申告したというような積極的な行動をした場合など、積極的に術策を用いる場合は、「詐術」に該当することは当然です。

 ただ、自分が支払い不能の状態にあることを認識しつつ、その事実を相手方に告知背えずに借り入れを行ったというような消極的により相手方を誤信させた場合についても「差術」に含まれるかについては争いがあり、裁判例も分かれている状況ですが、一律に判断できるものではなく、具体的な状況によると思われます。

4 まとめ

 免責不許可事由の一つである詐術による信用取引(破産法第252条第1項第5号)については上述のとおりです。

 この行為があった場合でも、詐術の程度が軽微であったり、債権者において十分な信用調査を怠ったなど債権者側に重大な過失が認められたりするような場合には、最終的に裁量免責を受けることができることもあります。

 自己破産を検討されている方は、上記のような行為を行わないよう注意していただくとともに、既に行ってしまっている場合でも、どのような対処を行っていくか次第では免責を受けられる可能性もありますので、まずは弁護士にご相談いただければと存じます。

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