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免責不許可事由2 不当な債務負担行為2022-11-20 12:00

カテゴリ: 自己破産

 自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていると思います。

 個人の方が自己破産をする最大の目的は借金を免除してもらうことにあるはずです。自己破産をすると、借金(債務)について支払いの責任を免除してもらうことができます。このことを免責といいます。

 厳密には、破産手続と免責手続は別の手続ではありますが、自己破産を検討している方は基本的には両方の手続を行うことを希望されているはずです。

 しかし、自己破産の手続をしたからといって、必ず免責されるわけではありません。

 「免責不許可事由」がある場合には、裁判所に免責を許可してもらうことができないことがあります。

 自己破産をしても免責を受けることができなければ、意味がありませんので、自己破産をするにあたっては免責不許可事由があるかどうかを検討しておく必要があります。

 今回は、「免責不許可事由」の一つである不当な債務負担行為(破産法第252条第1項第2号)について解説します。

1 破産法の規定

 破産法第252条第1項第2号では、免責不許可事由として以下の通り定めています。

 「破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。」

 破産手続が始まるのを遅らせようと考えて、高い金利で借金をしたり、クレジットカードで物を買って安く換金してしまったりすると、免責不許可事由に当たります。

 このような破産者の行為は不誠実であるとして、免責をしてもらうことができなくなります。

 この条文を分解すると、以下のとおりになります。

 ① 「著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと」

 ➁ その行為を行うにあたって「上記行為をするに当たって、「破産手続の開始を遅延させる目的」があったこと

2 「著しく不利益な条件での債務負担」について

 債務負担というのは、借金をしたりすることです。

 単に借金をしただけではなく、「著しく不利益な条件」でされた場合が問題になります。

 著しく不利益というのは、取引社会における合理性を欠いた程度に不利益なものをいう、とされています。

 闇金などから高利で借金をすれば基本的には該当することになると思われます。

3 「信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分した」について

 「信用取引」とは、簡単にいえば後払いで商品を購入することです。

 クレジットカードで何かを購入して、それを安く売って現金を手に入れることが該当します。

 クレジットカードで商品を購入するということは、クレジットカード会社に商品の代金を立て替えて支払ってもらうということですが、免責が許可されれば、クレジットカード会社は破産者に対して立て替えたお金の支払いを請求することができなくなってしまいますが、破産者は、免責されると返済をしなくなってよくなるうえ、売って得た現金まで貰えることになってしまい、不当であり、不誠実な行為であることから免責事由とされています。

 さらに、そもそも、最初から返済するつもりもないにもかかわらず、クレジットカードを利用して物を購入し、それを売って現金を得たということであれば、詐欺罪にあたります。犯罪になりますので、逮捕されるおそれもありますので、ご注意ください。

4 「破産手続の開始を遅延させる目的」について

 「破産手続の開始を遅延させる目的」については、支払いができない状態になっているにもかかわらず、わざと破産手続きの開始を遅らせようとする目的ということになります。

 また、破産手続きを開始を遅らせる目的だけではなく、破産手続き開始を免れる目的も含むとされています。

 前記のような不利益な条件での債務負担行為等をすれば、基本的には、その調査や債権者への対応等のために破産手続の開始が遅れてしまうはずだと言えると思いますので、そのような行為をしたこと自体が、「破産手続の開始を遅延させる目的」があったと判断される可能性が高いと思われます。

5 まとめ

 免責不許可事由の一つである不当な債務負担行為(破産法第252条第1項第2号)については上述のとおりです。

 この行為があった場合でもその行為に至る経緯、行為の態様、具体的な時期・状況、債権者の意見の内容等の種々の事情を総合的に考慮したうえで、最終的に裁量免責を受けることができることもあります。

 自己破産を検討されている方は、上記のような行為を行わないよう注意していただくとともに、既に行ってしまっている場合でも、どのような対処を行っていくか次第では免責を受けられる可能性もありますので、まずは弁護士にご相談いただければと存じます。

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