自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていると思います。
個人の方が自己破産をする最大の目的は借金を免除してもらうことにあるはずです。自己破産をすると、借金(債務)について支払いの責任を免除してもらうことができます。このことを免責といいます。
厳密には、破産手続と免責手続は別の手続ではありますが、自己破産を検討している方は基本的には両方の手続を行うことを希望されているはずです。
しかし、自己破産の手続をしたからといって、必ず免責されるわけではありません。
「免責不許可事由」がある場合には、裁判所に免責を許可してもらうことができないことがあります。
自己破産をしても免責を受けることができなければ、意味がありませんので、自己破産をするにあたっては免責不許可事由があるかどうかを検討しておく必要があります。
今回は、「免責不許可事由」の一つである調査における説明拒否・虚偽説明(破産法第252条第1項第8号)について解説します。
1 破産法の規定
破産法第252条第1項第8号では、免責不許可事由として以下の通り定めています。
「破産手続において裁判所が行う調査において,説明を拒み,又は虚偽の説明をしたこと。」
破産手続きにおいて裁判所が行う調査一般に関して、説明を拒否したり、嘘の説明をすることです。
裁判所が、調査を行おうとして、何らかの事項について説明を求めたのに説明せず、嘘をついたりする行為は、免責不許可事由に当たります。
2 免責不許可事由とされている理由
破産手続において、免責が許可されると、破産者は債務の支払いをしなくてもよくなるというメリットを受けられますが、その反面として、債権者は、支払いを受けられなくなる不利益を被ることになります。
債権者に対して、このような大きな不利益を与えることになるのですから、債権者からもある程度理解を得られるように、裁判所としては適切に手続を進めていく必要があり、そのために、破産者に対しては種々の調査を行います。
そのような調査において、破産者が誠実な対応を行わず、説明をせず又は嘘の説明をするようことは許されないことは明らかであり、このような不誠実な行為を行う破産者は免責というメリットも受けられなくともやむを得ないので、免責不許可事由とされています。
3 破産手続において裁判所が行う調査について
破産手続自体は、破産者の財産を、債権者に適正に分配するための手続です。
そのため、裁判所としては、破産手続きにおいては、主に、破産者の財産の調査と、破産者に対する債権の調査を行います。
破産者の下に、配当に充てることができる財産はどれだけあり、配当を受けるべき債権者は誰であり、各債権者はいくらの配当を受けるべきかということを調査することになります。
4 説明を拒み,又は虚偽の説明をしたこと
裁判所に対し、説明を拒否したり、嘘の説明をする行為が対象とされています。
破産申立てにあたっては、大阪地裁では、破産申立書、債権者一覧表、財産目録、報告書、家計収支表等を提出することになっていますが、このような書類の中に事実に反する記載がされていたという場合には、この免責不許可事由に該当することもあります。
これらの書類の作成にあたっては、有利不利を問わず、事実をありのままに記載する必要がありますので、包み隠さずお話を聞かせていただく必要があります。
5 まとめ
免責不許可事由の一つである調査における説明拒否・虚偽説明(破産法第252条第1項第8号)については上述のとおりです。
破産手続きにおいては、正直に事情を話し、何も隠し立てしないよう心掛ける必要があります。
自己破産を検討されている方は、上記のような行為を行わないよう注意していただくとともに、既に行ってしまっている場合でも、どのような対処を行っていくか次第では免責を受けられる可能性もありますので、まずは弁護士にご相談いただければと存じます。