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自己破産と退職金2022-11-15 11:00

カテゴリ: 自己破産

 自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていることがほとんどだと思います。

 そして、借金の負担から解放された後の将来の生活について、破産手続によって自分の資産がどうなるのか等不安に思われていると思います。

 破産手続は、基本的には、資産をすべてお金に換えて、借金の返済に充て、返済できないものについては免除してもらうことになりますが、残せる資産もあります。

 勤務先からの退職金も資産であるため、自己破産した場合に退職金がどうなるのかは重大な問題であると思います。

 今回は、破産する場合の、退職金に関する取扱いについて解説します。

1 退職金について

⑴ 退職金の有無について

 退職金については、働いていれば当然支払われるものではなく、勤務先に退職金制度があれば支払われるものです。

 すべての会社に退職金制度があるわけではありませんので、そもそも退職金制度が無い場合には、退職金を請求する権利自体がありませんので、特に問題になることはありません。

⑵ 受領済みの退職金について

 既に勤務先を退職して、退職金を受け取り済みの場合には、退職金として支払いを受けたものを現金で保管しているのであれば、現金として、預金口座に入れているのであれば預金として扱われることになります。

 元々のその金銭が退職金であったか否かは関係なく、現金や預金として、破産手続きのなかで処分されるか否かが決まることになります。

⑵ 未受領の退職金について

 在職中で未だ退職金を受け取っていない場合や退職したものの未だ退職金を受け取っていない場合は、退職金を請求することができる権利(債権)も財産として扱われることになります。

2 退職金債権の取り扱いについて

⑴ 自由財産について

 債務整理の中でも、任意整理・個人再生といった手続では、退職金債権を金銭に変える必要はありませんので、そのままにしておくことができます。これらの手続では、手続完了後、債権者に返済をしていくことが前提になります。

 これに対して、自己破産の場合には、基本的には、退職金債権は、金銭に換えて、債権者への配当に充てられることになるのが原則ですが、一定の範囲内であれば、持ち続けることができます。

 退職金債権については、その4分の3が差押禁止債権とされています。

 残りの4分の1の部分については、差押禁止債権ではないため、当然に自由財産となるものではありません。

 基本的には、換価されて借金の返済に充てられることになり、ご本人の手元には残らないことになります。

 具体的には、管財人が、勤務先から退職金債権の4分の1の支払いを受け、債権者に分配することになります。

 退職金債権の金額は、将来支払われる退職金の額自体を基準とするのではなく、破産手続開始決定が出た時点で退職したとすればいくらになるかという金額が基準になります。

 また、大阪地裁では、退職金債権について、以下のような基準で評価した上で、20万円未満になる場合は、自由財産として扱ってもらえることになっています。

① 破産開始決定時に退職したと仮定した場合の自己都合による退職金支給見込み額の8分の1の金額

➁ 退職金支給が近々に行われる場合には、退職金支給見込み額の4分の1(あるいはそれに近い額)

 つまり、上記の基準で評価した場合に、退職金債権の額が20万円未満であれば、自己破産をしたとしても、そのまま維持することができます。

 20万円以上の部分については、管財人が現金に換えて、債権者への配当に充てることになるため、原則として、維持することができなくなります。

 ここで、退職金の支払いを受けるためには、勤務先を退職するか、勤務先に退職金の前払いをしてもらわなければならないということになります。

 しかし、勤務先を退職してしまえば収入が無くなり、生活の再建を行っていくことができなくなるおそれがありますし、管財人が勤務先に退職金の前払いを請求すると、破産したことが勤務先に知られ、その後の勤務に支障を来すおそれがあります。

 そこで、通常は、退職金支給見込み額の4分の1の金額を、破産者が管財人に支払う代わりに、管財人は、退職金債権については破産財団から放棄するという取り扱いをします。

⑵ 同時廃止

 同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。

 退職金債権の金額を含め、すべての財産を合計しても、破産手続費用を賄うことができないという場合には,同時廃止になります。

 上記のとおり、大阪地裁では、退職金債権について、上記の基準で評価した上で20万円未満である場合には自由財産として扱われ、破産財団には組み入れられないことになります。

 そのため、退職金債権の額が20万円未満で、そのほかに特に財産が無い場合には、同時廃止となります。

 20万円以上の退職金債権がある場合には、管財事件となり、管財人が選任されることになります。

3 まとめ

 以上のように、自己破産をする場合には、退職金債権のうち一定の部分については、債権者への配当に充てられることになるのが原則ではありますが、一定部分は維持することができます。

 また、退職金債権の金額によって、同時廃止事件となるか、管財事件となるかが変わってきます。

 個々人の状況によっては、ちょっとした工夫をするだけも、管財事件となるかどうかが変わることもありますので、まずは、弁護士にご相談いただければと存じます。

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