自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていることがほとんどだと思います。
そして、借金の負担から解放された後の将来の生活について、破産手続によって自分の資産がどうなるのか等不安に思われていると思います。
破産手続は、基本的には、資産をすべてお金に換えて、借金の返済に充て、返済できないものについては免除してもらうことになりますが、残せる資産もあります。
生命保険などの保険契約も資産であるため、保険契約を残せるかどうかは重大な問題であると思います。
今回は、破産する場合の、保険に関する取扱いについて解説します。
1 保険契約について
保険は、万が一の事故等が起こった場合に、自分や家族の生活を守ってくれるものですが、保険が資産であるということはあまり認識されていない方もいらっしゃるように思われます。
破産手続上は、保険を解約したときに戻ってくる解約返戻金が、資産として扱われることになります。
生命保険などの保険契約は、生活に必ず必要とまではいえませんが、年齢や健康状態により、解約してしまうと再加入できないこともあるため、そのような場合には慎重に検討する必要があります。
すべての保険契約に解約返戻金があるわけではありません。
貯蓄型・積立型の保険には解約返戻金がありますが、掛け捨て型の保険には解約返戻金はありません。
解約返戻金の有無や金額は、保険証券(及び解約返戻金額証明書)で確認することができます。
手元に保険証書がない場合は、契約している保険会社にお問い合わせください。
2 保険契約の取り扱いについて
⑴ 自由財産について
債務整理の中でも、任意整理・個人再生といった手続では、保険契約を解約する必要はなく、保険はそのまま持っていることができます。これらの手続では、手続完了後、債権者に返済をしていくことが前提になります。
これに対して、自己破産の場合には、基本的には、生命保険などの解約返戻金は、金銭に換えて、債権者への配当に充てられることになるため、解約をしなければならないのが原則ですが、一定の範囲内であれば、持ち続けることができます。
生命保険などの解約返戻金は、破産をする場合、差押禁止財産ではないため当然に自由財産となるものではありません。
基本的には、換価されて借金の返済に充てられることになり、保険契約を維持することはできず、また、ご本人の手元に解約返戻金は返ってきません。
具体的には、管財人が、保険契約を解約して保険会社から解約返戻金の払い戻しを受け、債権者に配当します。
ただし、大阪地裁では、解約返戻金額が20万円未満の場合は、自由財産として扱ってもらえることになっています。
つまり、解約返戻金額が20万円未満の保険契約については、自己破産をしたとしても、解約する必要は無く、解約返戻金もそのまま維持することができます。
20万円以上の部分については、管財人が現金に換えて、債権者への配当に充てることになるため、原則として、維持することができなくなります。
この解約返戻金額については、加入している保険契約全ての解約返戻金の見込額の合計で算定します。
生命保険以外の養老保険、自動車保険、傷害保険、火災保険、地震保険、損害賠償保険などの保険契約も同様に扱われます。
なお、健康保険、国民健康保険などの公的なものについては、解約返戻金はないので、換価の対象にはなりません。
⑵ 同時廃止
同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。
保険契約の解約返戻金額を含め、すべての財産を合計しても、破産手続費用を賄うことができないという場合には,同時廃止になります。
上記のとおり、大阪地裁では、保険契約について、解約返戻金額の合計が20万円未満である場合には自由財産として扱われ、破産財団には組み入れられないことになります。
そのため、解約返戻金額の合計が20万円未満で、そのほかに特に財産が無い場合には、同時廃止となります。
20万円以上の解約返戻金がある場合には、管財事件となり、管財人が選任されることになります。
4 まとめ
以上のように、自己破産をする場合には、保険契約については解約して借金の返済に充てられてしまうのが原則ではありますが、一定部分は維持することができます。
また、解約返戻金の金額によって、同時廃止事件となるか、管財事件となるかが変わってきます。
個々人の状況によっては、ちょっとした工夫をするだけも、管財事件となるかどうかが変わることもあり、また、保険契約を維持することができる場合もありますので、まずは、弁護士にご相談いただければと存じます。