自己破産を検討されている方は、借金の負担から解放され、今後の生活の立て直しを図ることを一番の目的とされていることがほとんどだと思います。
そして、借金の負担から解放された後の将来の生活について、破産手続によって自分の資産がどうなるのか等不安に思われていると思います。
破産手続は、基本的には、資産をすべてお金に換えて、借金の返済に充て、返済できないものについては免除してもらうことになりますが、残せる資産もあります。
今回は、破産する場合の、預貯金に関する取扱いについて解説します。
1 現金と預貯金について
普段の生活では、現金と預貯金についてはあまり区別して考えておられないかと思います。
ただ、法律上は、現金と預貯金とは全く別の性質を持つもので、取り扱いも異なります。
「現金」というのは、手元に持っている紙幣・貨幣ですが、「預貯金」は銀行・信用金庫等に現金を預けてあるということであり、この場合、現金を所持しているのはあくまでも銀行・信用金庫等です。
この場合、ご本人は、銀行・信用金庫等に対して、預けている現金を返せと請求できる権利(債権)を持っていることになり、法律上は、消費寄託契約に基づく預貯金返還請求権と呼ばれます。
2 預貯金の取り扱いについて
⑴ 自由財産について
債務整理の中でも、任意整理・個人再生といった手続では、預貯金はそのまま持っていることができます。これらの手続では、手続完了後、債権者に返済をしていくことが前提になります。
これに対して、自己破産の場合には、基本的には、預貯金は債権者への配当に充てられることになるため、預貯金をそのまま持っておくことはできませんが、一定の範囲内であれば、持ち続けることができます。
預貯金については、破産をする場合、法律上、差押禁止財産ではないため当然に自由財産となるものではありません。
基本的には、換価されて借金の返済に充てられることになり、ご本人の手元に現金は返ってきません。
具体的には、管財人が、銀行・信用金庫等から返金を受け、債権者に配当します。
ただし、大阪地裁では、預貯金の残高が20万円未満の場合は、自由財産として扱ってもらえることになっています。
つまり、20万円未満の預貯金については、自己破産をしたとしても、そのまま持っていることができます。
この残高20万円については、ご本人名義の全ての口座の合計額で算定します。
20万円以上の部分については、管財人が現金に換えて、債権者への配当に充てることになるため、持っておくことはできません。
⑵ 同時廃止
同時廃止となるのは、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。
すべての財産を合計しても、破産手続費用を賄うことができないという場合には,同時廃止になります。
上記のとおり、大阪地裁では、残高合計が20万円未満の預貯金は自由財産として扱われ、破産財団には組み入れられないことになります。
そのため、預貯金の残高の合計が20万円未満で、そのほかに特に財産が無い場合には、同時廃止となります。
20万円以上の預金がある場合には、管財事件となり、管財人が選任されることになります。
3 まとめ
以上のように、自己破産をする場合には、預貯金は返済に充てられてしまうのが原則ではありますが、預貯金の一定部分は持ち続けることができます。
また、預貯金の金額によって、同時廃止事件となるか、管財事件となるかが変わってきます。
個々人の状況によっては、ちょっとした工夫をするだけも、管財事件となるかどうかが変わることもありますので、まずは、弁護士にご相談いただければと存じます。