ブログ

債務整理のひとつ、個人再生とは?条件・対象者や費用、手続の流れや注意点を解説2022-11-12 19:00

カテゴリ: 個人再生

 司法統計によると、平成30年に全地方裁判所で終結された個人再生事件は1万1452件と、1日におよそ31人もの方が個人再生によって債務を整理していることがわかります。

【参考】再生既済事件数―事件の種類及び終局区分別 - 裁判所[https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/593/010593.pdf]

 収入に見合わない借金を抱えているときは、経済的にも精神的にも苦しい状態ですので、返済が難しくなった場合はなんらかの債務整理を検討する必要があります。

 本記事では、債務整理の1つである個人再生の概要について解説します。

 個人再生を検討している方、個人再生について知りたい方はぜひ参考にしてください。

1 個人再生とは

 個人再生とは、借金等の債務の返済ができなくなった方が、すべての債権者への返済金額を減額して、原則3年間で返済するという手続です。計画通りに返済を行えば、残りの債務が免除されます。

 個人再生には「住宅ローンについての特則」をつけることができ、住宅ローンの返済総額だけは減額せずに住宅を維持することが可能です。また、居住用の住宅を保有している場合は、住宅を手放さずに債務を整理することができます。

2 個人再生の条件・対象者

 個人再生の対象になるのは、雇用されて働いている、もしくは個人事業主としての収入がある方です。いずれも将来にわたり継続した収入があることが条件となります。また、住宅ローンを除く借金の総額が5000万円以下であることも条件の1つです。

 個人事業主の方は、「小規模個人再生手続」、給与所得者の方は「給与所得者等再生手続」を選択することになります。給与所得者等再生手続では、「収入が給料などで、金額が安定していること」という条件も課されます。

 個人再生手続は、無職や専業主婦、年金生活者の方などは利用することができません。

3 個人再生に必要な費用

 個人再生手続のために必要な費用は以下の通りです。

⑴ 弁護士に依頼した場合

 個人再生を弁護士に依頼した場合は、弁護士費用が50万円程度(事務所によって異なります。)、裁判所に納める費用が2万円程度(管轄裁判所によって異なります。)です。

⑵ 弁護士に依頼しなかった場合

 弁護士に依頼せずに個人再生を申し立てた場合は、裁判所に30万円程度の費用を納める必要があります。

4 個人再生の最低返済金額

 個人再生は、借金の返済義務が全額免除されるのではなく、一定金額を3年間支払い続ける必要があります。返済金額は、借金の総額によって決められます。

 小規模個人再生手続の最低返済額の目安は、借金の総額に応じて、以下のとおりです。

100万円未満 全額

100万円以上500万円以下  100万円

500万円を超えて1500万円以下 総額の5分の1

1500万円を超えて3000万円以下 300万円

3000万円を超えて5000万円以下 総額の10分の1

 給与所得者の場合は、この表で返済額を算出した金額と、過去2年分の可処分所得を比較して多い方の金額を選択します。可処分所得とは、収入から税金や最低限の生活費を差し引いた金額です。

5 個人再生手続の手順

 次に、個人再生手続の手順を解説します。

⑴ 申立て

 まずは裁判所に個人再生の申立てを行います。その際は、「審尋」といって裁判官による面接が行われることがあります。審尋での質問は、借金の理由や内訳、返済についてなどです。再生委員が選任されている場合は、再生委員による面接が行われることもあります。

⑵ 開始決定

 個人再生の申立て後1か月程度で、再生手続開始決定が出されます。

⑶ 債権者による債権届出の提出

 再生手続が決定すると、「再生手続開始決定」が貸金業者や金融機関などの債権者に送付されます。それを受け取った債権者は、債権額を裁判所に申し出ます。

⑷ 債権認否一覧表の提出

 業者や債権者から提出された債権届出書の債権額を認めるかどうかを検討して、「債権認否一覧表」を裁判所に提出します。

⑸ 履行テストの実施

 個人再生では、返済予定額を指定された口座に一定期間積立続ける履行テストが行われることが多いです。履行テストは、毎月一定金額の積立を継続できるかどうかを裁判所が判断するために行われます。

⑹ 債権額の確定

 申立書に記載した債権金額に間違いがある場合は、債権者が裁判所に誤りを申告します。金額が正しければその金額が債権額となり、確定します。

⑺ 再生計画案の提出

 債権額が確定したら1か月以内に再生計画案を提出します。家計の収支表も必要です。

⑻ 書面決議または意見聴取の実施

 提出された再生計画表は、裁判所が債権者に配布します。債権者は再生計画表を確認し、賛成するかどうかを判断します。

 小規模個人再生の場合は「債権者の議決」、給与所得者等再生手続は「債権者への意見取得」が実施されます。小規模個人再生の場合、債権者の過半数もしくは債権総額の半額を超えた債権者が反対をした場合は、手続が終了となってしまいます。

⑼ 再生計画案の認可

 履行テストをクリアして、債権者からの異論が無ければ再生計画案が認可されます。

⑽ 支払い開始

 個人再生の認可が確定したら、原則3年間の返済をスタートします。返済が滞った場合は、再生計画が取り消されることもあります。

6 個人再生に関する注意点

 最後に個人再生を検討している方が注意すべき点について解説します。

⑴ 継続的収入が見込めない方は個人再生が認められない

 個人再生は、個人事業主と給与所得者のいずれも、継続して安定した収入がある方が対象の債務整理方法です。無職の方や専業主婦、働いていても収入が安定しない方は認められない可能性があります。

 収入がない方は個人再生ではなく、自己破産を検討しましょう。

⑵ 住宅ローンは返済しなければならない

 個人再生においては、住宅資金特別条項を利用する場合は、住宅ローンはそのまま返済しなければなりません。住宅を手放さなければ、住宅ローンの返済金額を減額することはできません。住宅を処分してもよい場合は、住宅ローンも整理対象になり圧縮されます。

⑶ ローン返済中の自動車は引き上げられるおそれがある

 自動車をローンで購入し、ローン返済中は所有権がローン会社にあるという契約の場合は、個人再生をすると自動車をローン会社に引き上げられてしまいます。この契約のことを、「所有権留保」といいます。

 所有権留保がついていない自動車の場合はローンの返済中でも引き上げられることはありません。一般的には、ディーラーローンや信販会社のローンは所有権留保契約になっていることが多く、銀行のマイカーローンは所有権留保契約ではないことが多いです。

 ご自身の自動車の所有者を確認しておきましょう。所有者は車検証に記載されています。

⑷ クレジットカードの契約が難しくなる

 個人再生が決定すると、その情報が信用情報機関に掲載されます。信用情報機関は、キャッシングだけでなくクレジットカード会社の審査でも確認されるため、個人再生をするとクレジットカードの契約は難しいです。

 信用情報機関によって掲載期間は異なりますが、消費者金融や信販会社系だと5年間、銀行系は10年間記録されます。また、貸金業者等の社内記録には更に長期間残ることが想定されるため、一度個人再生を行ったことがある業者でのクレジットカード契約は難しくなるでしょう。

⑸ 個人から借りたお金も整理の対象になる

 個人再生は、貸金業者だけでなくすべての債務が整理の対象となるため、友人や知人、同僚等に借りた借金も整理されてしまいます。「友人だけは整理したくないから」と裁判所に申告しないことは許されません。

7 まとめ

 個人再生は、住宅を手放すことなく借金の負担を大きく軽減できる制度です。無理のない範囲で3年間返済をし続ければ、残りの借金の返済は免除されるため、家計への負担を最小限に抑えながら生活を立て直すことができます。

 ただし、個人再生の手続は書類の作成や裁判官との面接など複雑なものが多いので、ご自身で対応せずに弁護士に依頼をするようにしましょう。弁護士に相談をすることで、最適な債務整理方法を知ることもできます。

お問い合わせ

リトラス弁護士法人についてのお問い合わせは、お電話またはこちらのお問い合わせページからお気軽にお尋ね下さい。

0120-489-572

受付時間:平日9:30~18:00

メールでのお問い合わせはコチラ