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財産開示手続について2022-11-09 17:45

カテゴリ: 民事一般

  •  財産開示手続について

 お金を貸したのに返してくれない、配偶者が婚姻費用や養育費を支払ってくれない、事故の相手方が賠償金を支払ってくれない、共同相続人が遺産分割に応じてくれないといった金銭に関する問題については、相手方との間で話がつかなければ、強制的に金銭を回収するためには、最終的に、訴訟等の裁判所での手続を行うことを検討することになります。

 もっとも、相手方に金銭の支払いを命じる内容の裁判が下されたとしても、裁判所がお金を支払ってくれるわけではありませんし、自動的にお金が入金されるわけではありません。

 裁判を経ても、相手方が素直に支払ってこない場合、強制的に金銭を回収するためには、差押え等の強制執行を行う必要があります。

 ただし、強制執行を行う場合には、相手方の財産を特定して申立てをする必要があるため、相手方の財産に関する情報がないと、強制執行を行うことができなくなります。

 そこで、民事執行法では、相手方を裁判所に呼んで、相手方の財産の内容を明らかにさせる手続(財産開示手続)が設けられています。

 

  •  民事執行法の改正

 2020(令和2)年4月に民事執行法が改正され、財産開示手続について、債務者が裁判所の呼び出しに応じない等の場合に、刑罰が科されることになりました(民事執行法213条1項5号・6号)。

 呼び出しに応じない等の対応をすることは、犯罪になるということです。

 刑罰の内容としては、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」です。

 刑罰の対象となる行為は、以下のとおりです。

① 呼び出しを受けた財産開示期日に、正当な理由なく出頭しない。

② 出頭はしたが、宣誓を拒んだ。

③ 宣誓をしたが、陳述する義務がある事項について陳述をしない。

④ 宣誓をしたが、陳述する義務がある事項について虚偽の陳述をした。

 

  •  財産開示手続の利用状況

 このような改正もあったため、財産開示手続が以前よりも良く利用されるようになりました。

 私も何度か利用していますが、財産開示手続の件数が増えたためか、手続にかかる時間が若干長くなってきているように感じています。

 司法統計を確認したところ、改正前の2019(平成31・令和元)年の財産開示手続の新受件数は577件でしたが、2020(令和2)年には3930件、2021(令和3)年には8155件と、2年間で約14倍となっており、件数が激増しています。

令和3年司法統計年報 1 民事・行政編」第1-2表 事件の種類と新受件数の推移https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/592/012592.pdf

 

  •  検挙事例 

 

2020年10月20日 神奈川県警 書類送検
 借金数万円を全く返済せず、財産開示手続期日に出頭しなかった。

2021年2月6日 広島県警 書類送検
 交通事故賠償金の支払いを命じられたが、これに応じず、財産開示手続期日に出頭しなかった。

2021年3月5日 警視庁 書類送検
 家賃16万円を滞納し、保証会社に支払いを行わず、財産開示手続期日に出頭しなかった。

2021年10月15日 前橋簡裁 略式命令(罰金)
 葬儀業者への支払いを拒み、財産開示手続期日に出頭しなかった。

2021年11月19日 岐阜県警揖斐署 逮捕
 だまし取られた金銭の被害弁償金を支払わず、財産開示手続に出頭しなかった。

2022年2月9日 神奈川県警瀬谷署 逮捕
 借金60万円のうち55万円を返済せず、財産開示手続期日に出頭しなかった。

2022年6月9日 大阪第4検察審査会 起訴相当議決
 暴行の賠償金として約260万円の支払いを命じる判決が出されたが、賠償金を支払わず、財産開示手続の期日に出頭しなかった。

 大阪府警が書類送検した後、大阪地検が不起訴(嫌疑不十分)としたが、大阪第4検察審査会が起訴相当の議決をした。

 

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