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「個人再生」と自己破産、任意整理の違いについて2022-11-08 23:30

カテゴリ: 債務整理一般

1 債務整理の方法のひとつ「個人再生」の意味や任意整理・自己破産との違いについて

 個人再生とは、裁判所を通じて行う債務整理で、借金の残高を返済可能な金額に圧縮し、原則として3年間で返済します。

 住宅を所有している方は、住宅を処分することなく行うことができるため、住宅を所有していて借金に苦しんでいる方の多くが検討する手続きです。

 借金を返すことは難しいが、破産手続をとることは避けたい、又は、破産手続きをとることは難しいといった方もこの手続きを検討することになります。

 ただし、個人再生は、安定した収入があることを前提となる手続きであるため、無職の方は申し立てることができません。また、借金の総額が5000万円以下という条件もあります。

 今回は、個人再生の意味や種類、メリット・デメリット、費用などを解説します。

2 個人再生とは

 「個人再生」とは、借金の返済を軽減するための手続きで、借金の返済が難しくなった場合に行うことができます。

 個人再生は、裁判所の決定によって、借金の額を減額した上で、原則3年の分割払いをすることになります。

 個人再生には、以下の2種類の手続きが存在します。 

・ 小規模個人再生

・ 給与所得者等個人再生

3 小規模個人再生とは

 「小規模個人再生」は、個人再生の原則的な形です。

 将来的に継続的に収入を得る見込みがある個人の債務者で、借金の総額が5000万円を超えない者を対象として、金額を圧縮した後の借金を原則3年で分割して弁済することを内容とする再生計画案を作成し、裁判所の認可を得て、借金を返済していくことにより、残りの債務が免除されるという手続きです。

 ただし、債権者の同意が必要になります。

4 給与所得者等個人再生とは

 「給与所得者等個人再生」とは、小規模個人再生の特則であり、小規模個人再生の対象者のうち、一般のサラリーマン等、将来の収入を確実かつ容易に把握することができる者を対象とする手続きです。

 小規模個人再生の場合に必要な債権者の同意は不要になりますが、債務者の収入や家族構成等を基礎に可処分所得を計算して、その2年分以上の額を弁済の原資に当てることが条件となります。

5 個人再生のメリット

⑴ 資産を手元に残すことができる。

 自己破産する場合には、持ち家がある場合には処分しなければならなくなりますが、個人再生の場合には住宅ローンについての特則を利用すれば、自宅を手放すことはありません。

⑵ 免責不許可事由がある場合にも利用できる

 自己破産する場合には、ギャンブル等の浪費があると免責不許可事由となり、借金の返済の免除を受けられないことがあり得ます。

 免責不許可事由がある場合でも、個人再生手続を行うことは可能です。

⑶ 資格制限がない

 自己破産を申し立てた場合には、保険外交員や古物商、警備員や旅行業務取扱管理者などの資格制限を受けますが、個人再生の場合にはそのような資格制限はありませんので、お仕事上これらの資格が必要な方はまずは個人再生手続を行うことを検討したほうがよいものと思われます。

⑷ 返済負担が大幅に軽減される

 個人再生では、将来の利息カットや返済期間の延長により毎月の返済負担を軽減し、借金の完済を目指すことになりますが、任意整理と比較すると借金の大幅な減額を受けることができます。

6 個人再生のデメリット

⑴ 信用情報機関に登録される

 任意整理や破産手続きでも同様ですが、手続を行うと、信用情報機関(個人の借金の契約や返済履歴などが登録されている機関)に情報が登録されます。信用情報機関への情報の登録期間である5年間は新規の借金やクレジットカード、住宅ローンの契約、携帯電話の分割払いの審査や、賃貸住宅を借りる際の信販会社系保証会社による審査に通りにくくなるなどのデメリットがあります。

⑵ 借金の返済を継続しなければならない

 自己破産手続であれば、借金の返済義務が免除されますが、個人再生の場合には、借金の額を圧縮することはできるものの、弁済計画に定めたとおり弁済を行う必要があります。

 また、返済を継続する必要があるため、将来にわたって継続的な収入を得る見込みのある人でなければ利用することができません。

⑶ 利用できる条件が限定されていること

 任意整理とは異なり裁判所への申立てが必要であり、手続きが複雑になります。

 また、個人再生手続の場合には、住宅ローンを除く債務額が5,000万円以下であることが必要です。

⑷ 債権者(お金を貸した人)の一部だけを対象にすることができない 

 任意整理とは異なり、全ての債権者が対象になるので、「消費者金融の借金だけ整理したい」といったような選択はできません。

7 個人再生を選択するケース

 まとまった借金はあるものの、ある程度の資産、収入がある方、特に持ち家があり、手放したくないという方には、個人再生をお勧めします。

 また、収入はあるものの、ギャンブルなどの浪費のために多額の借金を負うことになった方は、自己破産手続きを執ったとしても、免責(借金の免除)を受けることが出来ない可能性があるため、個人再生を検討されることをお勧めします。

 さらに、仕事を継続し、収入を得る上で、保険外交員などの資格が必要になる方も、個人再生を検討されることをお勧めします。

8 個人再生にかかる費用や期間

 個人再生にかかる費用は、裁判所に支払う費用と弁護士等の専門家に支払う費用の2つです。

 裁判所に支払う費用は、収入印紙や郵便切手、予納金を合計した約2万円となります。

 弁護士等の専門家に依頼した場合の費用は、30万円〜70万円程度が多いようです。

 住宅資金特別条項を利用する場合は、これに10万円程度の加算があるところが多いようです。

 なお、日弁連の旧報酬基準では、着手金は20万円以上、執務報酬として、再生手続開始決定を受けた後民事再生手続きが終了するまでの執務の対価として、協議により、執務料及び着手金又は報酬金の額を考慮した上で、月額で定める報酬を受けることができるとされており、報酬金は訴訟事件に準じて経済的利益の額に応じて算定されていたようです。

 多くの法律事務所で、個人再生のための弁護士費用は分割払いを受け付けているため、手元にまとまった現金がなくても問題ありません。

 個人再生にかかる期間は概ね半年〜1年です。

 まず、個人再生の申立を行うまでに早くとも3か月ほどかかり、その後の裁判所での手続きにも時間がかかります。

8 まとめ

 債務整理を検討する際には、どのような方法があるのか分からず、自分にとって最善の手続きが何か判断がつかないことが多いと思われます。

 いずれの手続きにも長所短所があるため、それぞれを理解した上で、ご自身に合った債務整理方法を選択しましょう。

 どの債務整理方法が最適なのか判断ができない方は、自身で判断せずに弁護士に相談することをおすすめします。

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