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債務整理のひとつ「自己破産」の意味や任意整理から切り替える際の注意点まとめ2022-11-08 23:00

カテゴリ: 自己破産

 司法統計によると、2018年における個人の自己破産の新規受理件数は7万3268件と、実に1日当たり200人もの方が自己破産を選択したことがわかります。

【参考】司法統計 民事・行政
令和2年度 105  破産新受事件数  受理区分別  全地方裁判所

 

 また、日本貸金業協会の統計によると、2020年2月末時点での個人向け無担保貸付の残高は、4兆2549億400万円と、前年同月比で2.1%の増加となっています。

【参考】月次統計資料 - 日本貸金業協会

 しかしながら、このように金融機関や消費者金融による積極的な融資が続けば、返済不能に陥る方が増えてしまいます。

 さまざまな事情から借金の返済が難しくなった場合、多くの方が検討するのが任意整理や自己破産などの債務整理です。

 今回は、債務整理や自己破産、任意整理の意味や種類、メリット・デメリット、費用などを解説します。

1 債務整理とは

 債務整理とは、借金の返済を軽減するための手続きで、借金の返済が難しくなった場合に行うことができます。

 債務整理の種類は、主には以下の4つです。

① 任意整理

② 過払い金請求

③ 個人再生

④ 自己破産

 まずは、「過払い金請求」と「個人再生」について解説します。「任意整理」と「自己破産」については後ほど詳しく説明しますので、そちらを参考にしてください。

⑴ 過払い金請求とは

 過払い金請求とは、貸金業者に対して支払いすぎていた利息を返還するよう請求する手続きのことです。

 2010年6月17日以前、消費者金融や信販会社、クレジットカード会社などは、利息制限法を超える金利でお金を貸し出していました。法律で定められている上限を超えて、利息を取り過ぎていたことを意味します。

 現在、2010年6月17日以前にお金を借りていて、利息を支払いすぎていた方は、貸金業者等に返還を求めることが可能です(完済後10年以内)。返済期間によっては、現在返済中の借金を完済した上で、手元に支払いすぎた利息が戻ってくる可能性もあります。

⑵ 個人再生とは

 個人再生とは裁判所を通じて行う債務整理で、借金の残高を返済可能な金額に圧縮し、原則として3年間で返済します。住宅を所有している方は、住宅を処分することなく行うことができるため、住宅を所有していて借金に苦しんでいる方の多くが検討する手続きです。

 ただし、個人再生は、安定した収入があることを前提となる手続きであるため、無職の方は申し立てることができません。また、借金の総額が5000万円以下という条件もあります。

 個人再生については、別の記事で詳しく解説していますので、以下の記事も参考にしていただければと思います。

「個人再生」と自己破産、債務整理の違いについて

個人再生手続きを行った場合に圧縮・減額できる借金の金額について

借金の返済が苦しいが、マイホームを失いたくない場合にできること

個人再生・住宅ローン特則を利用できる「住宅」について

個人再生・住宅ローン特則を利用できる「住宅資金貸付債権」について

2 債務整理の一つ「任意整理」とは

 任意整理とは、債務整理の1つで、裁判所を経ずに金融機関や貸金業者と直接交渉を行う手続きです。※自己破産と比較される場合、「債務整理」という言葉が「任意整理」と同様の意味合いで使用されることがあります。

⑴ 任意整理のメリット

① 裁判所に申し立てる必要がないため手続きが簡単

 任意の手続きであるため裁判所への手続きの申立てが必要ありません。すぐに着手することができ、早期の解決が期待できます。

② 債権者(お金を貸した人)を選択した手続きが可能

 手続きを行う債権者を自分で選ぶことができ、「消費者金融の借金だけ整理したい」といったような選択が可能です。複数の借金・債務がある方にとっては、整理できる先を選べる点は大きなメリットとなります。

 例えば「友人の借金と滞納した家賃は債務整理の対象にしたくない」などの要望をかなえることができます。

③ 当該債権者への返済の一時的中止が可能

 任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、債権者に受任通知書が送付されます。手続きが終わるまで借金の返済を停止してもらうことができ、債権者からの督促の連絡も止まります。

④ 返済負担が軽減される

 任意整理では、将来の利息カットや返済期間の延長により毎月の返済負担を軽減し、借金の完済を目指します。ただし、返済負担が軽減されるとはいえ、3〜5年間にわたって返済を続ける必要があります。

⑵ 任意整理のデメリット

① 減額効果が低い

 個人再生ほどの借金圧縮効果はなく、複数の業者から借りている場合は、毎月の返済額が大きく減らない可能性もあります。また、借金の返済義務が免除されるわけではありません。

② 5年間は新規借入ができない

 任意整理を行うと、信用情報機関(個人の借金の契約や返済履歴などが登録されている機関)に情報が登録されます。信用情報機関への情報の登録期間である5年間は新規の借金やクレジットカード、住宅ローンの契約を行うことが困難になります。

③ 業者によっては対応不可

 任意整理は任意での話し合いであるため、業者によっては応じてもらえないことがあります。

⑶ 任意整理を選択するケース

① 友人にお金を借りている場合

 個人再生や自己破産などの手続きでは全ての債務が整理の対象となるため、「この借金だけは返したい」という要望は聞いてもらえません。

 しかし、任意整理であれば、整理する債権者を選択できます。

 つまり、友人や会社の上司などに借りているお金だけはしっかりと返済し、銀行や貸金業者の借金だけを整理するという手続きが可能です。

② 家賃を滞納している場合

 家賃を滞納している場合、滞納した家賃も借金と同様に債務扱いとなります。

 裁判所を通じて行う手続きでは滞納している家賃も債務整理の対象となるため、家賃を債務整理してしまうと強制退去になる可能性が非常に高く、次の部屋を借りるための初期費用や引っ越し費用が必要です。また、信販会社系の保証会社は信用情報機関の情報を参照して入居審査を行うため、次の部屋を借りる審査の通過が難しくなる可能性があります。

 任意整理であれば、家賃を債務整理の対象外とすることが可能であるため、他の借金の任意整理に取り組んでいる間に滞納した家賃を支払うことができます。また、他の借金の返済負担が軽減されて、家賃の支払いが可能になれば家を失うリスクは減少します。

⑷ 任意整理にかかる費用や期間

 任意整理をご自身で行う場合、費用はかかりません。

 ただし、債務者(お金を借りている人)が債権者と直接任意整理の交渉を行っても成功する可能性は低いため、一般的には弁護士や司法書士に手続きを依頼します。

 その場合は、着手金が1社あたり2〜6万円ほどかかります。

 任意整理を弁護士等に正式に依頼した場合、弁護士が債権者に受任通知書を送付した時点で、債権者からの連絡は止まり、一時的に返済を行う必要がなくなります。多くの法律事務所では即日受任通知書を送付するため、所要時間は長くても2日です。

 そこから話し合いによって和解条件が決定し、和解契約が成立するまでは数か月ほどかかります。

⑸ 任意整理後に支払いができなくなった場合は?

 任意整理は、毎月の返済負担を軽減することができる手続きではありますが、転職やリストラ、病気や怪我などによって返済ができなくなることもあります。返済の遅れが2か月を超えてしまうと、残債の一括返済を求められる可能性が高いです(期限の利益喪失)。

 返済が不可能となった場合、再度和解交渉を行うこととなりますが、一度約束を破った債務者に対して、債権者が再度の任意整理に応じるとは限りません。任意整理ができない場合は、個人再生や自己破産を検討しましょう。

3 債務整理の一つ「自己破産」とは

 自己破産とは、返済する責任を免れることができる手続きです。裁判所に申し立てを行い、認められればそれ以降は借金の返済義務を免れることができます。債務整理の中では最も効果が高い方法です。

 自己破産には、以下2種類の手続きが存在します。

① 破産管財事件

 破産管財とは、債務者が一定以上の財産・現金等を保有している場合に、それを現金化して債権者に分配する手続きです。

 弁護士に依頼しなかった場合は、破産管財人(債務者の財産を現金化する人)に50万円以上の予納金を支払う必要があります。弁護士に依頼している場合は、20万円以上の予納金が必要です。

② 同時廃止事件

 同時廃止とは、債務者が財産をほとんど持っていない場合に行われる手続きです。分配すべき財産がないため、破産手続きを開始すると同時に手続きが終了します。

⑴ 自己破産のメリット

① 借金の返済義務がなくなる

 自己破産の最大のメリットは全ての借金の返済義務がなくなることです。ただし、税金や離婚の慰謝料、交通事故の損害賠償金等の支払いは。免除されないこともあります。

② 督促がとまり、返済する必要がなくなる

 弁護士に自己破産を依頼した時点で、弁護士が債権者に受任通知を送付するため、すべての借金返済を一旦停止してもらうことができ、債権者からの督促が止まります。

 万が一自己破産が認められなかった場合でも、決定までの期間は返済が一時停止されているため、生活を立て直すことが可能です。

③ 最低限の預貯金等は手元に残すことができる

 自己破産において、一定額の預貯金や生活必需品は手放す必要がありません。したがって、自宅を所有していない方は破産前とほとんど変わらない生活を送ることができます。

⑵ 自己破産のデメリット

① 持ち家や高額財産を処分しなければならない

 一定の財産を所有している場合は、それらを換価(現金化すること)して債権者に分配しなければなりません。したがって、自宅や高級車、高額な財産を所有している方はそれらを処分する必要があります。

② 信用情報機関に登録される

 自己破産を行うと、信用情報機関にその旨が登録されるため、新たな借入ができなくなります。

 携帯電話の分割払いの審査や、賃貸住宅を借りる際の信販会社系保証会社による審査に通りにくくなるなどのデメリットがあります。

③ 就くことができない職業がある

 自己破産を申し立てると、手続き期間中、弁護士や弁理士、司法書士、宅地建物取引士、行政書士などの職業に就くことができません。また、保険外交員や古物商、警備員や旅行業務取扱管理者などの資格制限を受けます。

⑶ 自己破産を選択するケース

 自宅を所有していない方が「全ての借金をゼロにしたい」と考えている場合には自己破産をおすすめします。お金を借りている相手が誰であれ、経済的に返済が難しく、自己破産をしなければ生活が成り立たない場合は、自己破産を選択すべきでしょう。

 自宅を保有している場合は、個人再生など他の手続きが適してはいるものの、就業環境の変化などで返済が難しいようであれば、自宅を手放して人生をやり直すのも1つの手段です。

⑷ 自己破産にかかる費用や期間

 自己破産にかかる費用は、裁判所に支払う費用と弁護士等の専門家に支払う費用の2つです。

 裁判所に支払う費用は、収入印紙や郵便切手、予納金を合計した2万円弱となります。管財事件の場合はプラス20万円ほどかかります。

 弁護士等の専門家に依頼した場合の費用は、20万円〜60万円程度です。

 多くの法律事務所で、破産のための弁護士費用は分割払いを受け付けているため、手元にまとまった現金がなくても問題ありません。

 自己破産にかかる期間は概ね半年〜1年です。

 まず、自己破産の申立を行うまでに早くとも3か月ほどかかり、その後の裁判所での手続きにも時間がかかります。

 管財事件の場合は、財産の換価手続きや債権者集会など行うべき手続きが多いため、1年近くかかります。

 同時廃止の場合は、申立てから同時廃止が決定するまでの期間は2週間から1か月程度です。

4 任意整理から自己破産への切り替え

⑴ 任意整理から自己破産への切り替えは可能?

 任意整理で和解が成立した条件での返済が難しくなった場合は、任意整理から自己破産に切り替えることができます。任意整理と自己破産の違いは以下の通りです。

▼任意整理と自己破産の違い

裁判所での手続き : 任意整理では不要。自己破産では必要。

借金の返済義務 : 任意整理では返済負担が軽減されるものの返済が必要。自己破産では返済不要。

財産の処分 : 任意整理では必要ない。自己破産では一定額以上の財産は処分される。

信用情報機関への登録 : 任意整理でも自己破産でも、登録される

⑵ 自己破産への切り替えを検討する理由

 任意整理後の返済途中で自己破産を検討する代表的な理由は以下のとおりです。

・ リストラや異動によって収入が激減した

・ 病気や怪我で働けなくなった

・ 家族が増えて支出が増え、これまで通りの返済が難しくなった

・ 家族が抱えている借金の支払いを負担しなければならない

⑶ 任意整理から自己破産に切り替えるメリット・デメリット

 最大のメリットは、「返済する必要がなくなること」です。毎月の負担が軽減されていたとはいえ、決して楽ではなかった借金の返済から完全に解放されます。

 一方で「整理したくない借金・債務も整理しなければならないこと」、「自己破産のための費用がかかること」「一定期間職業に制限がかかること」がデメリットとして挙げられます。

⑷ 任意整理から自己破産に切り替える際の注意点

① 借金の理由

 任意整理と異なり、自己破産では借金の理由を問われます。ギャンブル等の理由では認められない可能性があります。

② 返済の努力

 債務者が返済できる経済的な余力があったにも関わらず、過度な遊興などにより返済をしていなかった場合などは、自己破産が認められない可能性があります。

③ 弁護士の引き継ぎ

 任意整理を依頼していた弁護士と、自己破産を依頼する弁護士が違う場合は、これまでの交渉の過程を新たな弁護士に引き継ぐ必要があります。任意整理を依頼していた弁護士に、書類の提出を依頼しましょう。

5 まとめ

 債務整理を検討する際に、多くの方が任意整理と自己破産のいずれを選択するかを迷うものです。

 どちらの手続きにも長所短所があるため、それぞれを理解した上で、ご自身に合った債務整理方法を選択しましょう。

 どの債務整理方法が最適なのか判断ができない方は、自身で判断せずに弁護士に相談することをおすすめします。

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