ブログ

債務整理を依頼するなら弁護士か司法書士か。両者で何が違うか。2022-11-08 00:00

カテゴリ: 債務整理一般

債務整理を依頼するなら司法書士or弁護士?違いや支払う報酬の差などを分かりやすく解説します。

 2018年に金融庁が5万1857人に対して行った調査によると、3年以内に消費者金融やクレジットカード会社のキャッシング、カードローンなどを利用したことがあると答えた方は全体の7.3%にものぼることがわかりました。また、地方自治体に寄せられた多重債務の相談件数は毎月2500件前後と、1営業日当たり100人以上の方が債務についての相談をしていることがわかります。

【参考】多重債務者対策を巡る現状及び施策の動向

 お金を借りたものの返済が難しくなった場合に検討するのが債務整理です。

 本記事では、専門家に債務整理を依頼することを検討している方に向けて、司法書士に依頼する場合と弁護士に依頼する場合の違いについて解説します。

弁護士と司法書士は何が違う?

 弁護士と司法書士は、それぞれ法律の専門家です。弁護士は、司法試験合格後に司法研修所で行われる司法修習をし修了し、弁護士登録を行った者、司法書士は司法書士試験に合格後、研修を受講し、司法書士登録を行った者です。

 弁護士は私人や法人の代理人となって交渉する専門家で、法律行為の代理を行い、さまざまな法律相談を受けることができます。債務整理だけでなく遺産相続や、企業間の紛争などすべての法律事務です。

 刑事事件の弁護人となって被疑者の弁護活動を行ったり、離婚問題の解決を図ったりというようなイメージがあるのではないでしょうか。

 それに対して司法書士が行う主な業務は、不動産の登記や登録業務、会社設立の際の登記などです。裁判所や検察庁、法務局に提出する書類の作成を代行することもあります。

 弁護士のように、裁判の代理人になることはできません。例外的に、法務大臣による認定司法書士の認定を受けた場合は、簡易裁判所で行われる140万円以下の訴訟の代理人になることは認められています(簡裁代理権)。140万円を超えている場合は、書類作成の代行のみ可能です。

債務整理における弁護士と司法書士の「できること」の違い

 続いては、債務整理において弁護士と司法書士ができることの違いを、上限金額と申立ての内容に分けて解説します。

取り扱える上限金額

 弁護士と司法書士では、債務整理で取り扱うことができる金額が異なります。

 弁護士には取扱金額の上限がないため、1社から借りている借金が500万円や1000万円などの高額であっても対応可能です。

 一方で、司法書士が代理人となれるのは、債務額が140万円までの事案です。1社の借入金額が140万円を超えていれば、司法書士が代理人になることはできません。

 ただし、借金の合計金額が140万円を超えていたとしても、例えば50万円ずつを3社から借り入れているというような場合は、司法書士でも対応可能です(平成28年6月27日、最高裁、第一小法廷)。

個人再生や自己破産の申立て

 弁護士は個人再生や自己破産を含めた、すべての債務整理において代理人になることができます。

 一方、司法書士は個人再生や自己破産書面作成の代行として、必要書類をとりまとめることはできますが、申立ての代理人になることはできません。例えば自己破産の場合、裁判官との「審尋」と呼ばれる面接に、司法書士が同席することはできないのです。

 ですので、債務整理の手続はすべて任せたいという方にとっては、司法書士よりも弁護士の方が手間をかけずに手続を進めることができるでしょう。

債務整理の種類ごとの弁護士と司法書士の違い

 次に、任意整理や個人再生、自己破産など債務整理の種類における弁護士と司法書士の違いを解説します。

任意整理 

 任意整理とは、貸金業者やお金を貸してくれた友人などの「債権者」とお金を借りている「債務者」が、裁判所を介さずに話し合い、将来の利息をカットしたり、返済期間を延長して毎月の返済額を減額する手続です。任意整理は、弁護士、司法書士ともに行うことができます。

 司法書士も、弁護士のように代理人となって債権者と利息のカットや返済期間について交渉可能です。ただし、先述のとおり司法書士が扱える金額は140万円までとなっているため、それを超える借金がある場合は、司法書士が対応することはできません。

個人再生

 個人再生とは、裁判所に申立てを行い、借金の返済総額を圧縮して返済負担を軽減する手続です。毎月返済をする必要があるため、一定の収入がある方が利用できます。

 弁護士は個人再生申立ての代理人となって、すべての手続を代行することが可能です。裁判官や個人再生委員との面接にも同席します。

 一方で司法書士は、個人再生の代理人になることはできません。書類を作成する書類作成代理人ですので、司法書士に依頼した場合はご自身で手続をする局面も発生します。また、司法書士は裁判官や個人再生委員との面接に同席することができないため、1人で面接に臨む必要があり、心細く感じる方が多いようです。

自己破産

 自己破産とは、借金が返済不能状態になった場合に裁判所に申し立てることで、借金の返済義務が免除される手続のことをいいます。

 自己破産においても、弁護士はすべての手続のサポートが可能である一方、司法書士は書類作成代行しか行うことができません。

 また、自己破産では、司法書士に依頼することで用意しなければならない金額が増えるケースがあります。それが、管財事件になった場合の予納金です。管財事件とは、自己破産を申し立てる際に、手元に一定の財産がある場合に選択される自己破産の手続です。管財事件になった場合は、管財人が選任されたあと、管財人によって財産が換価され、債権者(お金を貸した人)に分配される、という手順で手続きが進められます。その際、裁判所に「予納金」というお金を支払わなければなりません。

 弁護士に自己破産を依頼した場合の予納金は20万円ですが、司法書士に依頼した場合は50万円以上の予納金を納める必要があります(予納金の金額や取扱いは裁判所によって異なります。)。

債務整理で司法書士と弁護士に支払う報酬の差

 「司法書士の債務整理はローコストで、弁護士はハイコスト」というイメージを持たれることが多いですが、実際には債務整理のうち任意整理における報酬金額に大きな違いはありません。個人再生や自己破産は、弁護士の方が広くカバーできるため報酬は若干高額になります。

それぞれに依頼した場合の報酬を確認しておきましょう。

債務整理に必要な司法書士費用

 日本司法書士会連合会が作成した「債務整理事件における報酬に関する指針」では、任意整理を受任した司法書士が請求できる報酬額の上限が規定されています。

任意整理

 司法書士が任意整理を受け付けた際に、定額で請求できる金額の上限は5万円です。

 さらにプラスして、減額報酬として経済的利益の10%までを請求できるとしています。減額報酬とは、任意整理によって減額することができた総返済額のうち、一定割合を報酬とするものです。

 例えば、司法書士の交渉により総返済額が100万円の借金を60万円に減額できた場合は、40万円が経済的利益となるため、その10%である4万円が減額報酬です。したがって、定額報酬5万円+減額報酬4万円=合計45万円を司法書士に支払うということになります。

個人再生

 個人再生を司法書士に依頼した場合の報酬の相場は、総額で30万円から50万円程度です。住宅ローンがある場合は若干高額になります。

 さらに、「個人再生委員」が選任された場合は、個人再生委員への報酬が30万円程度必要です。大阪地方裁判所では、弁護士が代理人となった場合は、原則として個人再生委員は選任されません。しかしながら住宅ローンを除く債務が3000万円を超えている場合は個人再生委員が選任されます。

自己破産

 自己破産を司法書士に依頼した場合の報酬の相場は総額で、30万円から40万円程度です。

 別途裁判所に納める費用として、2万円程度が必要となります。管財事件となった場合は、予納金を支払います。司法書士に依頼した場合の予納金は50万円程度です。

債務整理に必要な弁護士費用

 弁護士に債務整理を依頼した場合の報酬の上限額は、日本弁護士連合会が策定した「債務整理事件処理の規律を定める規程」で決められています。

任意整理

 任意整理については、着手金の上限金額は定められていません。そのため、弁護士によって報酬が異なりますが、任意整理の着手金は数万円程度に設定していることが多いです。

 成功報酬は1社あたり2万円以下、商工ローンは5万円以下と規定されています。減額報酬金は減額分の10%以下です。

 この値段設定は、司法書士とほとんど変わりません。同じ費用であれば、任意整理から個人再生、自己破産への切り替えを見据えることができる弁護士の方がよいといえるでしょう。

個人再生

 弁護士に個人再生を依頼した場合に必要な着手金は30万円から60万円程度です。

 また、別途裁判所に納める費用が必要となります。裁判所に納める費用は、手数料が1万円、切手代が2000円前後、官報広告費が1万3496円です。個人再生委員が選任された場合の報酬は30万円程度です。大阪地方裁判所では、住宅ローンを除く債務額が3000万円を超えている場合に、個人再生委員が選任されます。

自己破産

 弁護士に自己破産を依頼した場合の着手金は20万円から60万円程度です。

 また、裁判所に支払う手数料等が2万円程度必要となります。管財事件になった場合は、21万8834円以上の破産予納金が必要です。

まとめ

 債務整理において、弁護士と司法書士のできることは異なります。

 弁護士はすべての事案の代理人となって、債権者と交渉したり、代理人として裁判所とのやりとりを行うことができます。一方で、司法書士は、債務額が140万円以下の事案でなければ代理人になることはできません。また、個人再生や自己破産の申立ての代理人になることも不可能です。

 個人再生や自己破産などを見据えて、債務整理についてトータルで依頼したいと考える場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

お問い合わせ

リトラス弁護士法人についてのお問い合わせは、お電話またはこちらのお問い合わせページからお気軽にお尋ね下さい。

0120-489-572

受付時間:平日9:30~18:00

メールでのお問い合わせはコチラ