会社破産/法人破産の手続きの流れとは?手順や注意点、弁護士相談のタイミングも解説
東京商工リサーチの発表によると、2019年度の近畿地方の会社倒産件数は2171件と、前年比3.5%の上昇でした。
【参考】年間(全国企業倒産状況)
2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響もあり、さらなる倒産件数の増加が見込まれます。
そこで本記事では、会社破産・法人破産の手続の流れや手順、注意点、弁護士相談のタイミングを解説します。
1 会社(法人)の破産とは
会社(法人)破産とは、会社や法人(株式会社や合同会社、有限会社や財団法人など)が負債と資産を清算する手続のことをいいます。
会社と法人は厳格には定義が異なります。株式会社や合同会社、有限会社は会社ですが、財団法人や社団法人は会社ではありません。しかし、いずれも「法人」ではあります。会社破産と法人破産は、ほとんど同じ意味といってよいですが、法人のほうが広い概念であるということです。
なお、法人成りしていない個人事業主は、会社破産の“会社”には含まれません。
会社破産をすると、会社の資産を清算して債務の返済義務を免れることができます。会社が清算されるため、事業を継続することはできません。破産したあとに、再度法人で同じ事業を立ち上げる場合は、新しい法人を設立する必要があります。
破産に似た言葉で、「倒産」がありますが、破産だけでなく事業を継続する民事再生や会社更生も含むのが倒産です。倒産は法律用語ではないため、定義が異なることもありますが、一般的に“企業の経営が行き詰まり、債務が弁済不可能となった状態”を指します。
会社破産、民事再生、会社更生については別の記事で詳しく説明してありますので参考にしてください。
2 会社の破産手続の手順
次に、破産手続きを検討している方へ向けて、会社の破産手続の具体的に手順を解説します。
① 弁護士に依頼
法人破産の手続の第一歩は、弁護士への相談と依頼です。破産すべきかどうかを含めて弁護士に相談した上で、最適な方法について助言を受けます。
「破産を選択するしかない」と考えていても、弁護士に相談することで、会社を存続させる民事再生や会社更生の道が見えてくることもあります。
弁護士に相談する際は、会社の経営状態が分かる帳票等を用意しておきましょう。
② 破産手続の決定と受任通知の送付
破産の意思を固めたら、事業を停止する日を決めます。通常は、事業停止日をもって従業員を解雇します。必要な書類を確保した上で、事業所の閉鎖も必要です。
弁護士が債権者に受任通知書を送付したら、それ以降は債権者の対応窓口は弁護士となります。また、従業員には給与や退職金の支払い等の対応を説明します。
受任通知を送付した時点で、一旦買掛金や借入金の支払いは停止されますので、支払う必要はありません。債権者からの督促対応をせずに済むため、精神的な負担も大幅に軽減されます。
③ 会社の財産の保全
破産を決定した場合、会社に残された財産がなくなってしまわないように、弁護士が財産の保全を行います。一般的には、代表社印や銀行印、預貯金通帳、手形帳、小切手帳、保険証券、有価証券、契約書類、請求書などを保全します。
④ 破産申立のための準備
破産申立に必要なさまざまな書類は弁護士が集めます。弁護士の指示に従って、書類の収集に協力する必要がありますが、弁護士主導で準備を進めるため、大きな負担にはならないでしょう。
一般的には以下のような書類が必要です。
・過去3年分の確定申告書
・会社の債務に関する契約書類
・買掛金の請求書
・会計帳簿
・社会保険料、税金の納付書や通知書など
・業務に関する契約書
⑤ 破産申立から終結まで
破産申立後は、破産管財人の選任→破産債権の届出、調査、確定→中間配当→最後配当→破産手続きの終了の順で締結まで進みます。
弁護士は、打ち合わせや書類収集の結果にしたがって破産の申立書を作成します。裁判所が破産の申立書を受理して、すべての書類を確認し、裁判官が破産要件を満たしていると判断すると、破産手続開始決定がなされます。
以降は、会社の財産は「破産財団」となり、経営者様であっても勝手に処分することはできません。裁判所は破産管財人を選任し、破産管財人が破産財団の財産を管理することとなります。
破産管財人は、破産手続開始決定後数か月で、「債権者集会」を開いて経過を説明します。会社に換価できる財産がある場合は、破産管財人が換価した上で、優先順位に従って債権者に配当する、という手順です。
これらの手続がすべて完了したら、破産手続は終結となります。法人は消滅するため、破産した会社で事業をやり直すことはできません。会社の財産を配当してもなお残った税金や社会保険料等を支払う必要もなくなります。
破産手続の流れについてはこちらの記事もご確認ください。
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3 会社の破産手続を行う際の注意点
会社の破産手続を行う際に注意すべき点は以下の2点です。
① 代表や保証人も自己破産を検討する
会社が破産した場合、借入金の保証人となっている代表者や保証人が、債務を負うことになります。中小企業では、代表者や親族が連帯保証人となっていることが多いため、その借入金については個人が負担しなければなりません。それを避けるために、会社の破産申立と同時に代表や連帯保証人も、自己破産を申し立てます。
会社が破産する場合、会社に財産を残すことはできませんが、個人の自己破産であれば、一定金額以下の財産を残すことが可能です。自宅や不動産などの高額な資産は破産管財人に引き渡して換価されることとなります。手元に残すことができる財産は、現金であれば99万円です。
② 解雇予告手当を用意して従業員を解雇する
破産するということは、従業員を雇用し続けることはできないということです。一般的には、破産申立の直前や、申立と同時に従業員を解雇します。
労働基準法第20条で、解雇を行う際は解雇日の30日前に通知しなければならないと規定されています。これは、破産による解雇も例外ではありません。
30日前に解雇予告ができない場合は、解雇予告手当を支払う必要があります。解雇予告手当は、直前3か月に支払われた賃金総額を3か月の総日数で割って、「平均賃金」を算定し、平均賃金の30日分を支払うというものです。
解雇予告を一切行うことができなかった場合は平均賃金の30日分、15日前に予告できた場合は15日分を支払うことになります。
会社が破産を検討している場合、いつ弁護士に相談すべき?
破産を行うには裁判所や管財人に支払う費用が必要です。また、従業員に支払う解雇予告手当も確保しなければなりません。
会社の経営が思わしくない、運転資金が底をついたというようなケースで破産を検討している場合は、できるだけ早く弁護士に相談してください。
現金が手元にある段階で弁護士に早期相談をすることで、手続がスムーズに進むほか、以下の様な利点もあります。
・ 破産ではなく会社を存続させる道も検討できる
・ 精神的負担が軽減される
・ 従業員や取引先にかける迷惑を最小限にできる
手元に現金があるうちに、弁護士にご相談することで選択肢が広がります。また、会社の経営について悩み続けていた日々にも終止符をうつことができますので、なるべく早くご相談いただくことをおすすめします。
4 まとめ
法人が破産する場合、必要な手続や書類が膨大であるため手続きが難しいです。そのため、弁護士への依頼が必要不可欠であるといえるでしょう。
弁護士に依頼することで、債権者への対応が不要となり、債務の弁済を停止させることができます。
弁護士は、常に決済日や返済日について頭を悩ませていた経営者様の精神的不安を大幅に軽減することができ、また従業員や取引先の負担を少なくすることも可能です。なるべく早くご相談いただくことで、弁護士が提案できる解決策も豊富になります。まずはお気軽にご相談ください。