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破産管財事件となってしまう場合について2022-11-05 00:00

カテゴリ: 債務整理一般

 破産事件には破産管財事件と同時廃止事件があり、破産をする方としては、できるならば負担の少ない同時廃止事件にしてもらいたいと考えるはずです。

 しかし、同時廃止事件にしてもらいたいと裁判所に申立てをしたとしても、裁判所から、破産管財事件にしなければならないと言われてしまうことがあります。

 今回は、裁判所から、破産管財事件にしなければならないと言われる可能性が高い類型について、ご説明いたします。

1 破産管財事件への移行が検討される類型について

 大阪地方裁判所では、破産管財事件への移行が検討されるのは以下の5つの類型です。

 ① 個人事業型

 ② 資産等調査型

 ③ 否認対象行為調査型

 ④ 法人代表者型、法人並存型

 ⑤ 免責観察型

 以下、各類型についてご説明いたします。

2 各類型について

① 個人事業型 会社勤めではない、自営業の方

 会社勤めではない、個人事業主の方は、原則として、破産管財事件として取り扱われることになっています。

 個人事業主の方の場合は、財産の状況・内容を確認するためには、破産管財人が詳細な調査を行う必要があることが多いためです。

 なぜなら、個人事業主の方は、持っておられる財産・資産や行っておられた取引・契約について、事業に関する財産・取引と、個人的な私生活に関する財産・取引がしっかりと分けられておらず、混同されていたりして、その実態が把握し難くなっていることが通常だからです。

 もちろん、個人事業主だからといって、絶対に破産管財事件になるというわけではありません。

 個人事業主とひとくくりに言っても、どんな事業の内容で、どれだけの規模で、どれぐらい営業していたのか等その実情は一人一人異なり、様々です。

 個人事業主の方について、破産管財事件として取り扱われるべき理由は上記のとおりですが、その理由があてはまらない場合であれば、同時廃止事件として扱ってもらえる可能性があります。

 負債額、事業内容、営業していた時期及び期間、申立人代理人による調査の状況、債権者の移行等によっては、同時廃止事件として進行することが全く否定されるわけではない、とされています。

② 資産等調査型 経緯や資産が明確でない

 破産に至る経緯や資産の内容などに疑義があり、破産管財人の調査によって疑問点を解明しなければならないと判断される場合には、破産管財事件となります。

 特に、債務総額が3000万円以上(保証債務や住宅ローンを除く)ある場合には、それだけの借金をすることができるということは、逆に言うと、それだけ多額の借入ができる信用力があったはず、つまり、借り入れに見合うだけの資産があったのではないかと考えらえるため、類型的に、資産の調査の必要があると考えられ、破産管財事件になります。

 破産手続きを行う場合には、破産に至る経緯や資産の内容等について、可能な限り、詳細に思い出してもらい、資料を収集し、管財人による調査の必要が無いと思ってもらえるよう努力すべきです。

③ 否認対象行為調査型 問題のある行為がある

 自己破産を行う場合には、すべての財産を明らかにして、お金に換えることができるもの(生活に必要な一定のものは除く)は妥当な金額でお金に換え、すべての債権者(借入先)に対して、平等に弁済(配当)がされることになります。

 本当は財産をもっているのにそれを隠して、借金だけ免除してもらう、といったことは許されませんし、安く売ってしまったり、壊して価値を減少させたりすることも許されません。

 親族や友人など特別な関係であるからといって、そちらだけ優遇して返済をして、その他の借金だけ免除してもらうということも許されません。

 このような行為を行った場合には、破産管財人から、否認権を行使される可能性があります。否認権は、簡単にいうと、上記のような行為を行っていたとしても、その行為の法律上の効果を失わせ、本来あるべきところに戻させることができる権利です。

 上記のような行為の存在がうかがわれ、否認権の行使が可能か否かを破産管財人により調査する必要があると判断される場合には、破産管財事件となります。

 上記のような行為を行ってしまうと、免責を受けることができなくなる可能性もあります。

 当然のことではありますが、ご自身の財産の状況については正直に説明をして、問題のある行為、また、問題があるように受け取られかねない行為は行わないよう心掛ける必要があります。少なくとも、破産することを検討し始めたのであれば、何らかの行為でまとまった金額を動かそう(収入・支出ともに)とする場合には、事前に弁護士に問題が無いか相談しておくほうがよいと思います。

④ 法人代表者型、法人並存型 会社の社長

 法人の代表者についても、個人事業主と同じように、個人の資産と法人の財産との混同が生じやすいなど、類型的に破産管財人の調査が必要であると考えらえるため、破産管財事件となります。

 また、法人の代表者が破産する場合には、できる限り、法人についても同時に破産するよう促されます。法人と法人代表者について同時(又は近接)した時期に破産を申し立てる場合、法人と法人代表者のいずれか一方に殆ど財産がないような状態であれば、その事件については、官報広告費や郵便切手代のみで、もう一方の事件に付加して破産管財事件とする運用(法人並存型)が行われています。

 法人代表者であっても、管財費用が捻出できず、法人に財産がないことが明らかである場合には、同時廃止事件として扱ってもらえる可能性もあります。

⑤ 免責観察型 

 同時廃止事件として申し立てられたとしても、免責不許可事由があり、その内容が軽いものではなく、そのままでは免責不許可となることが見込まれ、裁量免責を受けるためには、破産管財人による免責不許可事由の内容についての調査、家計の収支などの生活状況についての指導監督等が必要であると判断される場合には、破産管財事件として扱われます。

 ただし、免責不許可事由の内容があまりにも悪質な場合には、そのような扱いはされません。

 この類型については、破産管財人が選任され、破産管財人の調査、指導・監督を受けることにより、免責を得られる可能性があるのであれば、破産管財事件として扱ってもらいたいと言うことになるかと思いますので、同時廃止事件のほうがよいとは一概には言えないと思います。ただし、この類型の破産管財事件になったとしても、免責が許可されないこともあります。

 浪費等の免責不許可事由についていえば、破産を検討されているということは、既に免責不許可事由となりうる行為は行われた後ですので、それ自体をどうにかすることはできません。この場合には、過去の行為ではなく、そのことについて、現在、どのように反省し、将来、どのように生活を立て直していくかということをしっかりと考えていく必要があると思います。

3 まとめ

 自己破産の申し立てを検討する際には、多くの方が費用や手間の大きい破産管財事件よりも、同時廃止事件として扱われることを望まれるものと思います。

 しかし、上記のとおり、同時廃止事件として申し立てても破産管財事件に移行してしまう可能性の高い類型が存在します。

 最終的には裁判所により決定されることにはなりますが、それぞれの状況に応じて、為し得る対処をした結果、同時廃止事件として扱ってもらえることもありますので、お早めに弁護士に相談することをおすすめいたします。

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