大阪市西区西本町の法律事務所、リトラス弁護士法人の弁護士の山下翔です。
今回は、借金を減額するために行う債務整理である個人再生手続を行う場合に、借金をいくら減額できるかに関わる、清算価値保障原則について、解説したいと思います。
個人再生をして、再生計画の認可を受ければ、借金を圧縮することができます。
なんとか無理をして借金を返している状況に苦しんでいる方も、個人再生に成功すれば、無理なく借金を返済していくことができます。
個人再生を検討している方にとって、その借金をどれだけ圧縮できるかは非常に気になる点だといます。
1 個人再生における清算価値保障原則について
個人再生では、再生計画における弁済総額は、清算価値保障原則を充たしている必要があります。
清算価値保障原則とは、再生計画における弁済率が、自己破産をした場合の配当率以上でなければならないとする原則です。
再生計画における弁済総額が清算価値保障原則を充たしているか否かは、再生計画認可決定の時点において判断されます。
再生計画における弁済総額が清算価値保障原則を充たしていない場合、再生計画は不認可となり、債務を圧縮することができません。
2 自己破産の場合の配当率について
自己破産をした場合、債務者の資産は、自由財産として認められる範囲を除き、処分して金銭に換えられ、債権者に対する弁済(配当)に充てられることになります。
配当率とは、破産債権額に対する配当額の割合のことです。
個人再生の場合、自己破産をする場合よりも有利に取り扱われることはできません。
仮に、自己破産をしたと想定して、その場合に弁済(配当)に回されるはずの金額以上は弁済しなければなりません。
3 清算価値保障原則の根拠・理由について
個人再生における清算価値保障原則は、民事再生法上に明文の規定はありませんが、民事再生法174条2項4号の「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」に含まれていると解釈されています。
個人再生手続を行った場合、借金を減額したり、長期の分割払いにすることができます。
さらに、自己破産の場合と異なり、資産を処分することも必要とはされていません。
もし、債務者が多額の資産を保有しているにもかかわらず、それを持ち続けたまま、借金の減額等が認められるとすれば、債権者としては、本来支払われるべきものが支払われず、債務者が不当に得をすることになり、到底納得できないことは明らかです。
債権者としては、個人再生により圧縮された借金額以上の資産を債務者が持っているのであれば、個人再生ではなく破産をして、その資産を処分し、配当に回してほしいと考えるはずです。
そこで、借金の減額等を認める以上は、個人再生に対する債権者の理解を得るために、少なくとも、自己破産した場合の配当率以上の弁済率での弁済は必要であるとするのが、清算価値保障原則です。
4 清算価値の算定について
自己破産の場合、自由財産とされるものについては処分しなくてもよいものとされています。
個人再生における清算価値の算定においても、(本来的)自由財産とされるものについては、算定に含まなくても良いと考えるのが通例です。
算定の基準となるタイミングは、通常の民事再生手続では、再生手続開始時ですが、個人再生の場合には、再生化計画認可決定時における計画弁済総額よりも清算価値の方が高額であったときは再生計画を取り消すことができるとされており、再生計画認可決定時が基準になります。
そのため、個人再生手続を開始した後に財産が増えた場合は、増えた分についても清算価値の算定に含めて、再生計画が裁判所に認可される時点で、支払総額が清算価値を下回らないように注意する必要があります。
5 最後に
今回は、個人再生における清算価値保障原則についてご説明しました。
清算価値保障原則を守らなければ、再生計画が認可されず、借金を圧縮することができなくなってしまいます。
状況に応じて検討する必要がありますので、まずは、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所でも、個人再生手続に関するご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問合せいただければと存じます。
大阪市西区西本町の法律事務所 リトラス弁護士法人
弁護士 山下翔