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借金の返済が苦しいが、マイホームを失いたくない場合にできること2022-10-29 18:00

カテゴリ: 個人再生

 大阪市西区西本町の法律事務所、リトラス弁護士法人の弁護士の山下翔です。

 今回は、借金を減額するために行う債務整理である個人再生手続について、解説したいと思います。

 自己破産をすれば、借金を返さなくてよくなりますが、持ち家の場合、自宅を手放すことになります。

 しかし、個人再生の手続であれば、住宅ローン特則を利用して自宅を残せる可能性があります。

1 住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則、住宅資金特別条項)

 自宅を購入するために住宅ローンを組む場合、通常、自宅には住宅ローン債権の担保として抵当権が設定されます。

 抵当権が設定されていると、住宅ローンが支払えなくなった場合、金融機関は抵当権が設定されている不動産を処分して、その代金から優先的に住宅ローンの回収を行うことができます。

 住宅ローンが支払えなくなった場合には、金融機関によって自宅が強制的に売却されて住宅ローンの支払いに充てられてしまうことになります。

 借金の整理をする場合には、この住宅ローンが問題になることがあります。

 住宅ローン以外にも借金がある場合には、自己破産手続をすると、住宅ローンやその他の借金は支払わなくてよくなりますが、自宅も処分しなければならなくなります。

 しかし、できることなら自宅を失いたくないと考える方が多いと思います。

 住宅は単なる資産ではなく、生活の基盤になるものであり、自宅を失うと生活の再建を阻害することにもなりかねません。

 そこで、個人再生手続では、自宅を手放さずに経済的な再生を図ることができるようにするため、「住宅資金貸付債権に関する特則」(住宅ローン特則、住宅資金特別条項とも呼ばれます。)という特別な制度が設けられており、民事再生法196条以下に規定されています。

2 住宅ローン特則の効果

 住宅ローン特則を利用した場合には、住宅ローンについてはこれまでと同じように、又は若干方法を変更してでも支払い続けることにより、自宅は処分されず確保して住み続けることができ、住宅ローン以外の借金については減額してもらい、分割で支払っていくことができます。

 住宅ローン特則を利用した場合の、住宅ローンの返し方としては、以下のような類型があります。

1 正常返済型

 個人再生手続を行った後も、これまでの住宅ローンの約定のとおり返済を継続していく方法です。

 最も一般的かと思いますが、個人再生認可までの間、住宅ローンを滞りなく支払っていることを前提になります。

2 期限の利益回復型

 既に支払いが遅れてしまっていると、期限の利益を喪失し、一括で返済することを求められます。

 一括返済を求められている状態を元に戻して、期限の利益を復活させたうえで、遅れた分の元本・利息・遅延損害金を3年(~5年)で分割払いすることにより、一括請求された住宅ローン部分は元の約定のとおり支払っていく形になります。

3 弁済期間延長(リスケジュール)型

 期限の利益回復型での再生計画認可の見込みがない場合に、住宅ローンの弁済期間を延長することによって、1回の弁済額を少なくするものです。

 ただし、延長は10年以内で、かつ、70歳までしかできません。

4 元本猶予期間併用型

 弁済期間延長型での再生計画認可の見込みがない場合に、住宅ローンの弁済期間を延長することに加えて、3年(~5年)、元本の一部と利息のみを支払う形にして、その後に残元本・利息・遅延損害金を分割払いしていく形になります。

5 同意型

 住宅ローン債権者(金融機関)の同意を得て、住宅ローンの支払い方法を柔軟に決める形です。

 支払期間を10年以上延長したり、70歳以上まで延長したり、一定期間は利息のみを支払うようにするなど色々な形をとることができますが、金融機関の同意が必要です。

3 住宅ローン特則の利用条件

 住宅ローン特則を利用するには、個人再生(小規模個人再生又は給与所得者等再生)の利用条件を満たしていることはもちろんですが、そのほかにも、概要、以下のような条件を満たしている必要があります。

① 対象物件が「住宅」であること

② 対象債権が「住宅資金貸付債権」であること

③ 対象債権が法定代位により取得されたものでないこと

④ 対象物件に住宅資金貸付債権のための抵当権以外の担保が設定されていないこと

⑤ 対象物件以外の不動産にも住宅資金貸付債権の抵当権が設定されている場合には,その不動産に後順位抵当権者がいないこと

4 対象物件が「住宅」であることについて

 民事再生法196条1号において、「住宅」については以下のとおり定義されています。

 「個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。」

 事業用の物件や、収益物件(賃貸アパート等)のように他人に使わせる物件は対象になりません。

5 対象債権が「住宅資金貸付債権」であること

 住宅ローン特則の対象になるのは、「住宅資金貸付債権」です。

 「住宅資金貸付債権」については、民事再生法196条3号で以下のとおり定義されています。

 「住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。」

 取り敢えずは、一般的な住宅ローンを指すものと考えていただければよいと思います。

 その他にも条件はありますが、細かくなってしまうため、別途改めてご説明いたします。

6 最後に

 今回は、住宅ローン特則の概要をご説明しましたが、住宅ローン特則を利用する場合には、個人再生自体の要件に加えて住宅資金特別条項固有の要件も充たしていなければならず、要件を充たしているかどうかの判断は複雑になります。

 したがって、住宅資金特別条項の利用をお考えの方は、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 当事務所でも、個人再生手続に関するご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問合せいただければと存じます。

大阪市西区西本町の法律事務所 リトラス弁護士法人 

弁護士 山下翔

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