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法定相続分について2022-02-21 00:00

カテゴリ: 相続

大阪本町の法律事務所、リトラス弁護士法人の弁護士の山下翔です。

今回は、法定相続分について、概要をご説明いたします。

 

1 法律の規定

 

相続人複数いる場合に、それぞれの相続人が取得する遺産の割合を「相続分」といいます。

相続分については、民法で、以下のとおり、規定されています。

 

(法定相続分)

第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。

二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

(代襲相続人の相続分)

第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。

2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

(遺言による相続分の指定)

第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

 

2 相続分・指定相続分

 

「相続分」は、被相続人自身が遺言で定めることができます(民法902条)。

これを「指定相続分」といいます。

 

ただし、相続分の指定が遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

また、債務に関する相続分の指定は債権者に対抗できないと考えられています。

 

3 法定相続分

 

「法定相続分」とは、相続分の指定が無い場合の「相続分」のことです。

その名のとおり、法律で定められています。

その割合を、相続人ごとに説明すると以下のとおりになります。

 

⑴ 配偶者(被相続人の妻・夫)

被相続人の「配偶者」は、常に相続人になります(民法890条)。

配偶者しか相続人がいない場合のほかに、子がいる場合、子はいないが直系尊属がいる場合、子も直系尊属もいないが兄弟姉妹がいる場合の4つの場合があります。

① 配偶者のみの場合

配偶者は、被相続人に子(又は孫等)、直系尊属(父母や祖父母等)も兄弟姉妹(又は甥・姪等)がいなければ、すべてを一人で相続します。

② 配偶者と子(又は孫)がいる場合

被相続人の配偶者と被相続人の「子」など第一順位の相続人がいる場合の配偶者の法定相続分は2分の1です。

なお、子がいる場合は、直系尊属や兄弟姉妹は相続人にはなりません。

③ 配偶者と直系尊属(父母や祖父母)がいる場合

子がおらず、直系尊属がいる場合の配偶者の法定相続分は3分の2になります。

なお、兄弟姉妹は相続人にはなりません。

④ 配偶者と兄弟姉妹(又は甥・姪)が要る場合

子も直系尊属もおらず、兄弟姉妹だけがいる場合、配偶者の法定相続分は4分の3になります。

 

⑵ 子

被相続人の「子」は第1順位の相続人であり、被相続人に子がいる場合は、その子が法定相続人になります。(民法887条1項)、

なお、被相続人の死亡前に子が死亡しており、その子(孫)がいる場合には、子の分を孫が代襲相続します。

さらに、被相続人の死亡前に孫も死亡しており、その子(ひ孫)がいる場合には、子の分をひ孫が再代襲相続します。

① 配偶者がいない場合

被相続人の配偶者がいない場合は、被相続人の子が、すべてを相続します。

② 配偶者がいる場合

被相続人の配偶者がいる場合は、被相続人の子の法定相続分は、2分の1です。

 

⑶ 直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母など)

被相続人の「直系尊属」は、被相続人に「子」などの第1順位の相続人がいない場合に初めて相続人になります(民法889条1項1号)。

「直系尊属」全員が相続人になるのではなく、親等の近い人だけが相続人になります(民法889条1項1号但書)。

直系尊属が相続人となるときには、配偶者がいる場合といない場合の2つの場合があります。

① 配偶者がいない場合

直系尊属がすべてを相続します。

② 配偶者がいる場合  

配偶者がいる場合、直系尊属の法定相続分は3分の1になります。

 

⑷ 兄弟姉妹

被相続人の「兄弟姉妹」は、被相続人に、「子」などの第1順位の相続人がおらず、第2順位の「直系尊属」もいない場合に初めて相続人になります(民法889条1項2号)。

なお、被相続人の死亡前に兄弟姉妹が死亡しており、その子(甥・姪)がいる場合には、代襲相続が認められています。

しかし、「子」の場合と違って、甥や姪も亡くなっている場合に、「再代襲」はないので、甥や姪の子は相続人にはなりません。

兄弟姉妹が相続人となるときにも、配偶者がいる場合といない場合の2つの場合があります。

① 配偶者がいない場合

兄弟姉妹がすべてを相続します。

② 配偶者がいる場合

配偶者がいる場合、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です。

 

⑸ 立場が同じ者が複数いる場合

立場が同じ者同士の間では、相続分は等しいものとされています。

ただし、父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1になります。

なお、以前は、嫡出でない子(非嫡出子・婚外子)の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1とする規定がありましたが、最高裁でこの規定を違憲とする判決が下され、削除されており、嫡出か非嫡出かにかかわらず、子の相続分は等しくなっています。

 

 

4 法定相続分の意味

実際の遺産分割手続では、必ずしも法定相続分が確保されるとは限りません。

 

遺産分割協議では、相続人全員の合意があれば自由な割合で遺産分割をすることができるので、法定相続分に必ずしも従う必要はありません。

なお、被相続人が遺言書を残している場合でも、相続人全員の合意があれば遺言の内容に縛られることなく、自由な割合で遺産分割をすることができます。

 

また、生前に被相続人から多額の贈与を受けている相続人が要る場合には「特別受益」の制度、被相続人の財産の形成に寄与したり、財産の維持に貢献した相続人がいる場合には「寄与分」の制度により、相続分が修正されることがあります。

 

それでも、遺産分割審判の場合には、預貯金等の可分債権者法定相続分の割合に従って当然に分割されたものとして審判の対象から除外されることや、相続債務も法定相続分に応じて分割債務となるとされて同じく除外されるため、法定相続分は遺産分割にあたっての重要な基準となります。

 

 

以上のとおり、法定相続分は、遺産分割にあたっての重要な基準となるものですが、必ずしも従う必要のあるものではなく、当事者の合意によって自由に決めることができます。

遺産分割協議に当たっては、全員が納得できるよう、協議を進めていくことが大切です。

相続関係が複雑な場合や、なかなか協議ができそうになく、実際に相続に関する問題を抱えている方は、まずは、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

 

当事務所でも、相続に関するご相談は、初回は無料でお受けしておりますので、お気軽にお問合せいただければと存じます。

 

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