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借金の悪質な取り立てについて2022-09-26 19:00

カテゴリ: 債務整理一般

1 はじめに

 貸金業者に対する借金の返済が滞ったときに、朝晩問わずに電話がかかってきたり、突然自宅に押し掛けて来て、非常に困っているという方もよくおられます。このような貸金業者等の取り立て行為は許されるのでしょうか。

 今回は、問題のある悪質な取り立て行為について解説します。

2 許されない取り立て行為について

 貸金業者等が、返済を求める権利を持っているからといっても、悪質・違法な行為によって借金を取り立ててもよいというものではありません。

 暴力を振るったりすることは勿論、借主を困らせる取り立て行為も許されてはいません。

 どのような取り立て行為が許されないのかについては、刑法、貸金業者等については貸金業法等で規定されています。

3 刑法に触れる取り立て行為

 「払わなければ殺す」などと怒鳴ったりする行為は、脅迫罪(刑法222条)になります。

 この脅迫によって借金を回収した場合には恐喝罪(刑法249条)になります。

 暴力を振るう行為は暴行罪(刑法208条)になります。

 暴力を振るったことによって怪我をした場合には傷害罪(刑法204条)になります。

 取り立てによって業務が妨害されるようなことがあれば業務妨害罪(刑法233条、234条)になります。

 住居などから出ていくように要求したのに出て行かず居座り続ける場合には不退去罪(刑法130条)になります。

 これらの行為以外にも、刑法上の犯罪となり場合はありますが、もし、被害を受けた場合には、借金があるからと言って躊躇うことなく、警察に被害届を出したり、警察や検察庁に告訴手続をすることを検討してください。

 なお、ときどき、悪質な貸金業者や、法的な知識のない一般の方からは、借金を返済しないと詐欺罪になる、警察に行くぞ、などと脅すようなことを言われることもあります。

 しかし、単に借金を返すことができなくなったというだけで、詐欺罪になることはありません。

 最初から返済する気も無いのに借り入れをしたという場合には詐欺罪になり得ますが、借りた時には返済する気はあったが、その後に、結果的に完済することができなくなったという場合には、詐欺罪にはあたりません。

 なので、単に借金を返すことができなくなっただけなのに、返さなければ警察に行く等と言われたとしても、あまり気にする必要はありません。

 ほとんどの場合は、実際にはそんなことをするつもりはないのに、そのように言っているだけです。

 逆に、貸金業者がそのようなことを言ったような場合には、次に述べる貸金業法の規制からしても問題があります。

4 貸金業法が規制する取り立て行為

 貸金業法21条は、「貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。」と規定しており、以下のような言動を禁止しています。

① 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯(午後9時から午後8時)に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。

② 債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。

③ 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。

④ 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。

⑤ はり紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。

⑥ 債務者等に対し、債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。

⑦ 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。

⑧ 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。

⑨ 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

⑩ 債務者等に対し、前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。

 深夜に、電話がかかって来たり、返済の特則のファックスが送られてきたり、自宅に押し掛けて来たりしたときには、明らかに上記の規制に違反します(上記①)。

 借金した人の勤務先に連絡したり、訪問をすることも上記の規制に違反します(上記③)。

 クレジットカードを担保に貸し付けをしたり、返済が滞ったときにクレジットカードを使用して返済に充てさせたりしたときも、上記の規制に違反します(上記⑥)。

 また、このような場合には割賦販売法上のカード等の譲受等の禁止(割賦販売法37条)にも違反します。

 借金した本人ではなく、配偶者や両親、兄弟などに対して、保証人でもないのに、借金の肩代わりをするよう求めることも、上記の規制に違反します(上記⑦)。

 債務整理のために裁判所に申立てをしたり、弁護士や司法書士に依頼をして、通知が送られた場合には取り立てを辞めなければなりませんが、それにもかかわらず、取り立てをしたときも、上記の規制に違反します(上記⑨)。

 このような違反行為には、「二年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という罰則も規定されています(貸金業法47条の3)。

 また、貸金業法20条2項では、「貸金業を営む者は、貸付けの契約について、債務者等が特定公正証書の作成を公証人に嘱託することを代理人に委任する場合には、当該代理人の選任に関し推薦その他これに類する関与をしてはならない。」とされています。

 貸金業者から白紙の委任状を渡され、これに署名押印して、印鑑証明書を渡すよう言われることがあります。

 このようなことに応じてしまうと、委任状を利用して、公正証書の作成や不動産に抵当権を設定し、直ちに強制執行をして、給料や家財道具などを差し押さえることができるようにされてしまうおそれがあります。

 そのため、上記の規定で規制されています。

 これについても、罰則が定められており、「一年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています(貸金業法48条1項4号の2)。

 こうした規制に違反する違法な取り立ては犯罪ですので、警察に相談し、被害届を出し、告訴することを検討してください。

 またこうした取り立てを受けた場合には、金融庁又は各地の財務局・都道府県の貸金業指導係に対して、苦情の申出をし、貸金業者の業務停止等の行政処分を求める申立てをすることも検討してください。

5 民事事件としての賠償請求

 上記のような刑事事件に関する手続きや、貸金業法違反による行政事件に関する手続きのほか、民事事件としても、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求として、負傷した場合の治療費や休業損害、慰謝料などを請求することもできます。

 このような請求を行う場合には、裁判所に申立てを行うことになりますが、ご自身で行うことは難しいこともあろうかと思われますので、弁護士にご相談いただければと存じます。

6 まとめ

 お金を貸しているからといって、何をしてもよいということにならないのは当然です。

 借金をしているからといって、何をされても我慢しなければならないなどとは思わないでください。

 今回ご説明させていただいたような、問題のある取り立て行為を受けた場合には、警察や行政に対して申し出ることも検討してください。

 また、このような問題のある取り立て行為を受けている場合には、借金の整理のことも含めて、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

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