1 はじめに
借金の返済で悩んでいる方の中には、自分が、借金の整理をするほどの状況ではないのではないかなどと躊躇ってしまう方もいらっしゃいます。
今回は、借金の返済で悩んでいる方について、どのような場合に借金の整理が必要か考えてみたいと思います。
2 整理の対象となる借金について
借金と言えば、消費者金融(サラ金)のことをイメージする人も多いと思いますが、銀行や友人・知人からの借入、住宅ローンやクレジットローンも借金(債務)です。
上記のように考えると、社会において借金のない人は少ないでしょうし、誰もが借金地獄に陥る可能性があるとも言えます。
住宅ローンやクレジットローンも借金です。
借金の整理では、金利の高い消費者金融からの借入やクレジットによるキャッシングが問題になることが多いですが、クレジットによる商品購入のローンや住宅ローンについても含めて考える必要があります。
クレジットローンについて、クレジットによる商品の販売は、「信用販売」と言われ、月賦による分割払いが通常ですが、その分割回数に応じて手数料が決められていて、年率に換算すると購入価格の10%ぐらいが取られていることになります。
クレジットローンは、現金払いと違って、その場でお金が無くても商品を購入することができることから、ついつい月々の返済額は多くなりがちです。
そのようなことがないように、しっかりと計画的に利用する必要があります。
住宅ローンについても、住宅ローン残金は借金であり、債務整理の対象となります。
住宅ローンが支払えなくなった場合、通常は住宅を売却して残債務を精算することになりますが、生活の場を失うことになり何とか住宅を残して借金の整理をすることができるよう、民事再生法の個人再生では、「住宅資金貸付債権の特則」を設けて、住宅を失うことなく再生ができる制度を設けています。
直接の借金ではありませんが、保証債務も債務整理の対象となり得ます。
保証債務は、ある人(主債務者)の保証人になることで発生する債務ですが、主債務者の返済が順調に進んでいる間は問題ありませんが、返済が滞ると、契約に従い保証人に支払い義務が生じます。
借金の整理では、貸金業者からの高利の借金だけでなく、すべての借金について整理を考え、生活の立て直しを図ることが重要です。
3 どのような場合に借金の整理が必要か
このような借金は、収入に対して返済額が一定の額を超えてしまうと、生活苦に陥ることになります。
借金の整理を考える場合には、借金の総額ではなく、返済額で考えることになります。
自己破産などの法的手段による借金の整理方法では、収入から考えて、月々の返済が行くか可能かが問題になります。
例えば、自己破産では、申立ての要件に「支払い不能にあたるとき」(破産法15条)と規定されていますが、これは一般的には、収入から住居費を差し引いて、その3分の1の額を3年間支払ったとしても、借金が完済できない状態と言われています。
利息も支払えないような場合には、支払い不能の状態といえます。
また、特定調停では、「支払不能に陥るおそれのある」場合に申立てができますが、これは一般的には、借金を利息制限法の金利で引き直して減額し、収入から住居費を差し引き、その3分の1の額を3年間支払って返済が可能な場合と言われています。
借金の法的な整理は、このような場合に必要なものですので、一時的なものではなく、恒常的に借金を含めて返済額が増加し、生活苦に追い込まれているのであれば、借金の整理が必要だということです。
高利の借入の場合、目安としては、借金が年収の1.5倍を超えると、自己破産による借金の整理をした方がよいのではないかと考えられます。
金融機関の住宅ローンの年間返済額の上限は、一般的には、税込み年収が400万円未満の方の場合は返済金が年収の30%、税込み年収が400万円以上の場合は年収の35%に設定されているようです。
これが、安定的に借金の返済ができる一つの目安と言えると思いますので、この割合を返済額が超えるのであれば、何らかの方法で借金を減額する対策が必要となるのではないかと思われます。
4 借金生活を続けていくとどうなるか
最初は軽い気持ちで、簡単に返せるからと、少額を借り入れただけだったとしても、何の計画もなくそれを繰り返していれば、気付かない間にだんだんと借金は増えていきます。
また、思ってもいなかった事情によって当初の思惑通りに返済できずにずるずると借り入れが増えていくこともあります。
借金返済のためにさらに借金をしなければならない自転車操業の状況に陥ると、借金は雪だるま式に膨れ上がります。
さらに、借金返済のための借金を繰り返していくと、返済が苦しくなればなるほど、多額の借金をしていかなければならなくなります。
そのようなことをしているうちに、いずれ借りることができるところもなくなってしまい、破綻してしまうことになります。
その間、貸金業者の取り立てに悩まされ、結果的には多額の借金を整理することになり、債務者にとっても、業者にとってもいいことはありません。
例えば、現在の借金が100万円で、借り入れの利息が29.2%だったと仮定すると、借り入れの利息分のみを同様の条件で他の消費者金融から借り入れて返済し続けると、3年で約240万円、5年で約420万円、8年で約1000万円になってしまいます。
もちろん借金を減らしていくためには、利息分だけでなく、当初借り入れた元本の返済もしなければならないので、実際には返済額は利息だけでなく元本の返済分も含めて考える必要があります。
しかし、お金が無いために、なんとか利息分だけ支払おうとして、またその支払いのための借金をするということを繰り返していると、思いもよらないような速度で借金は増えていきます。
5 金利の制限について
借金の利息については、法律上様々な制限があります。
利息制限法は、民事上有効な利息の上限を定めており、元本10万円未満の場合は年20%、元本10万円以上100万円未満の場合は年18%、元本100万円以上の場合は年15%が上限金利とされており、これを超える利息の部分は無効になります。
超えた部分は、まず、元本に充当され、元本に充当していった結果、元本が完済になって余りが生じる場合には、その生じた余り分を返還するよう請求することができます。
これが、いわゆる「過払い金」です。
出資法では、金銭の貸し付けを業として行う業者は年率20%、それ以外の者は年率109.5%を超える利息の契約、受領又は支払いの要求をすると刑事罰の対象になります。
罰則は、「五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」とされています。
貸金業規制法では「貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約において、年109.5%を超える割合による利息の契約をしたときは、当該消費貸借の契約は、無効とする。」とされています。
このような場合には利息の支払いだけではなく、借りたお金自体も返還しなくてよいものと考えられます。
特に、このような場合には、速やかに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
6 まとめ
今回は、借金の返済で悩んでいる方について、どのような場合に借金の整理が必要かについて、一般的な目安や、借金を続けるとどうなるか、その他法律上の制限についてご説明いたしました。
借金の返済で悩んでいる方の中には、自分が、借金の整理をするほどの状況ではないのではないかなどと躊躇ってしまう方もいらっしゃいます。
このような場合には、特に気兼ねすることなく、まずは弁護士にご相談いただければと思います。
しかし、それでも迷ってしまう、という場合には、上記のような一般的な目安や、今後借金を続けた場合に想定される状況などを確認してみて、ご判断いただければと存じます。
