大阪本町の法律事務所、リトラス弁護士法人の弁護士の山下翔です。
2018年に改正された相続法に関して、近時、立て続けにご相談いただくことがありましたので、今回は、改正の概要についてまとめたいと思います。
1 改正の概要
相続に関する法律について、2018年に改正された点の概要は、以下のとおりです。
「民法(相続関係)等の改正に関する要綱」より
第1 配偶者の居住権を保護するための方策
第2 遺産分割等に関する見直し
第3 遺言制度に関する見直し
第4 遺留分制度に関する見直し
第5 相続の効力等に関する見直し
第6 相続人以外の者の後見を考慮するための方策
2 改正内容の概略
「第1 配偶者の居住権を保護するための方策」について
1 配偶者短期居住権の新設
配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には、遺産分割が終了するまでの間、無償でその居住建物を使用できるようにした(民法1037条~1041条)。
2 配偶者居住権の新設
配偶者の居住建物を対象として、終身又は一定期間、配偶者にその使用を認める法定の権利を創設し、遺産分割等における選択肢の一つとして、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようにした(民法1028条~1036条)。
「第2 遺産分割等に関する見直し」について
1 配偶者保護のための方策(持ち戻し免除の意思表示推定規定)
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは、持ち戻しの免除の意思表示があったものと推定し、被相続人の意思を尊重した遺産分割ができるようにした(民法903条4項)。
2 遺産分割前の払戻制度の創設
相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払い戻しが受けられる制度を創設した(民法909条の2)。
3 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲
相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合に、計算上生じる不公平を是正する方策を設けた(民法906条の2)。
「第3 遺言制度に関する見直し」について
1 自筆証書遺言の方式緩和
自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようにした(民法968条)。
2 遺言執行者の権限の明確化(民法1007条、1012条~1016条)
3 公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
「第4 遺留分制度に関する見直し」について
遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行の規律を見直し、遺留分権の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ、受遺者等の請求により、金銭債務の全部又は一部の支払いにつき裁判所が期限を許与することができるようにする(民法1042条~1049条)。
「第5 相続の効力等に関する見直し」について
相続させる旨の遺言等により承継された財産については、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされていた現行法の規律を見直し、法定相続分を超える権利の承継については、対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないようにする(民法899条の2)。
「第6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策」について
相続人以外の被相続人の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与)を創設する(民法1050条)。
特別の寄与の制度創設に伴い、家庭裁判所における手続規定(管轄等)を設ける(家事事件手続法216条の2~216条の5)。
概略は上記のとおりですが、詳細な内容については、別途解説させていただきます。
今回の改正によって、影響を受けるかどうかは、個々人の具体的な状況によって異なります。
ネット上には、まだ、改正前の内容が表示されているようなところも散見されます。
実際に相続に関する問題を抱えている方は、まずは、弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
当事務所でも、相続に関するご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問合せいただければと存じます。
リトラス弁護士法人
弁護士 山下翔