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【概要】財産分与2022-12-26 19:00

カテゴリ: 離婚一般

第1 財産分与とは

財産分与は、夫婦が離婚する際に、夫婦の共有財産を分ける制度です。

夫婦は、結婚後、協力して、自宅を購入したり、預貯金を貯めたり、その他様々な財産を築いていきます。

離婚をする際には、夫婦はそれぞれ別々に暮らしていくことになるため、結婚生活中のような協力関係は解消されることになるため、清算をする必要が生じます。

財産分与については、民法768条に以下のとおり規定されています。

 

(財産分与)

第七百六十八条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。

3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

 

民法768条に規定されているとおり、離婚をした夫婦の一方が、他方に対して、財産の分与を求めることができます。

夫婦に共有の財産がある限り、離婚をする際には、請求する権利があります。

不倫をするなど有責配偶者であったとしても、財産分与を請求する権利を失うことはありません。

 

第2 財産分与の性質

財産分与については、以下のとおり、「清算」、「扶養」、「慰謝料」という三つの要素があるとされています。

財産分与について、最高裁判所第二小法廷昭和46年7月23日判決では、以下のとおり判示されています。

「離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とする」

「裁判所が財産分与を命ずるかどうかならびに分与の額および方法を定めるについては、当事者双方におけるいつさいの事情を考慮すべきものであるから、分与の請求の相手方が離婚についての有責の配偶者であつて、その有責行為により離婚に至らしめたことにつき請求者の被つた精神的損害を賠償すべき義務を負うと認められるときには、右損害賠償のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることもできると解すべきである。」

 

       1 「清算」の要素について

「清算」の要素は、夫婦財産関係の清算のことで、結婚生活中に夫婦が共同で築いた財産について、夫婦それぞれの貢献・寄与に応じて分配・清算をする、ということです。

通常、財産分与という場合には、この清算的財産分与のことをいいます。

       2 「扶養」の要素について

「扶養」の要素は、離婚後の扶養のことで、離婚後の生活の安定のために一方が他方を養う、ということです。

離婚することによって、夫婦間の扶助義務(民法752条)や婚姻費用分担義務(民法760条)はなくなり、夫婦はそれぞれ自己責任で生計を維持していかなければなりません。

しかし、専業主婦(専業主夫)で専ら家事に従事して、独自の財産もなく、直ぐに働きに出ることもできず、自活できない者に対しては、離婚後の相手方の扶養を義務付ける必要がある、とされています。

ただし、離婚後の扶養は、他の要素である「清算」と「慰謝料」を認めてもまだ生活に困窮するような場合に、他方の配偶者の財産状況に余裕がある限度で認められるに過ぎないと考えられています。

基本的には、離婚後の扶養は認められないことが多く、認められたとしてもあまり大きな金額にはなり難いです。

       3 「慰謝料」の要素について

「慰謝料」の要素は、有責(離婚の原因を作った)配偶者から他方に対して、慰謝料の意味合いで支払う、ということです。

ただし、基本的には、別途、慰謝料請求をすることが多いので、財産分与の判断のなかで実質的に考慮されることはほとんどないように思われます。

 

第3 財産分与の割合

財産分与の割合は、原則として、2分の1とされています。

専業主婦(専業主夫)だから少額しか貰えないということはありません。

たとえ、一方が専業主婦(専業主夫)であったとしても、結婚後に築いた財産の半分を取得できるのが原則です。

 

清算の割合について、法律の規定上は、具体的な基準は定められていません。

基本的には、共同の財産を築いたことに対する双方の協力・寄与・貢献の度合い(寄与度)の評価及び清算の割合は裁判所の裁量に委ねられており、事案ごとに寄与度について評価されることになります。

 

第4 財産分与の対象財産

       1 対象になる財産(共有財産)

離婚後に財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻期間中に築いた一切の財産です。

財産分与(精算的財産分与)は、離婚によって婚姻関係を解消するにあたって、夫婦が婚姻後、離婚するまでに協力して築いた財産を清算します。

そのため、対象財産となるのは、結婚生活を解消する時点で存在する財産ということになります。

したがって、結婚生活を解消した時点で、財産分与の対象財産が存在しなければ、財産分与請求権は発生しません。

また、夫婦が別居をしている場合、別居後は、普通は、夫婦が協力して財産を築くという関係にはないことになります。

そのため、別居をしてから離婚をするという場合には、原則として、財産分与の対象財産は、別居時に存在している財産ということになります。

       2 対象にならない財産(特有財産)

結婚前から、夫婦の一方の名義であったものは、その名義人の特有財産なので、財産分与の対象にはなりません。

婚姻後、離婚するまでに、夫婦の一方が相続や贈与によって得た財産も、その人の特有財産であるため、財産分与の対象にはなりません。

 

第5 財産分与の決め方

財産分与については、どのような方法で決めるのかは自由です。

まずは、夫婦で協議、つまり話し合って決めるのが通常かと思います。

話し合っても決まらない場合には、調停を申し立てることができます。

未だ離婚していない場合には、離婚調停を申し立てて、離婚調停のなかで財産分与について話合うことができます、

この場合に、離婚調停でも話し合いがつかないときは、離婚調停は不成立となり、離婚訴訟を提起することになるので、離婚訴訟を申し立てる際に、併せて附帯処分として財産分与の申立てをして、裁判官に判断してもらうことになります。

既に離婚している場合には、財産分与の調停を申し立てることができます。

この場合に、財産分与の調停でも話合いがつかないときは、調停が不成立になると自動的に審判手続に移行することになるので、審判手続のなかで、裁判官に判断してもらうことになります。

 

第6 財産分与の請求期限

財産分与の請求ができるのは、離婚が成立してから2年以内です。

離婚の際に、財産分与について取決めをしていなかった場合には、できるだけ早く手続を進めておくべきです。

財産分与について、離婚後に決めることもできますが、事前に協議をしておいて離婚と同時に取り決め、分与しておくことが無難です。

 

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